研究課題
これまでの研究において,喘息やアトピー性皮膚炎の既往歴がなく,さらに14種類の吸入抗原(ダニ,ハウスダスト,ネコ上皮,イヌ上皮,オオアワガエリ,ハルガヤ,ブタクサ,ヨモギ,スギ,ペニシリウム,クラドスポリウム,カンジダ,アルテルナリア,アスペルギルス)に感作されている(IgE MAST26 ルミカウント値 > 1.0)348名の日本人成人アレルギー性鼻炎患者を集め,ゲノムDNAを抽出,血清を分離して保管している.日本人のアレルギー性鼻炎患者348名,鼻炎のない健常者602名を用いてアレルギー性鼻炎に対するGWASを行った.アレルギー性鼻炎の診断は,被験者からの質問紙票による自己申告と,14種類の吸入抗原に対する非特異的IgE陽性を用いた.その結果、染色体10番にアレルギー性鼻炎と強い関連を示す領域を認め(p=3.4x10-7),同領域はPTPLA/STAM遺伝子の近傍であることを確認した.この領域にある一塩基多型(SNP)は,STAM(Signal Transducing Adaptor Molecule)のeSNP (遺伝子の発現量に関係のあるSNP)であることが判明し,アレルギー性鼻炎群ではSTAMの発現量が低下するAlleleとの関連を認めた.ケモカイン受容体CXCR4はアレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜で発現が亢進していることが知られている(J Immunol, 2002, Clin Exp Allergy, 2005).最近になってSTAM遺伝子は,このCXCR4の分解に関与している可能性が報告されている(Molecular Biology of the Cell, 2010).つまり,CXCR4の分解に関わるSTAMの発現量が低下するAlleleを持つ個体は,CXCR4の発現亢進を介してアレルギー性鼻炎発症の感受性が高まっている可能性がある.
2: おおむね順調に進展している
2型の免疫応答のネガティブレギュレーターとしての働きを持つ遺伝子TYRO3(a member of the TAM (TYRO3, AXL, and MERTK) family of receptor tyrosine kinases)のmRNAの発現を抑制するSNPが、日本人のアレルギー性鼻炎と関連があることを示した(未発表)。また、アレルゲン感作に関係する遺伝子群から算出した遺伝的リスクスコアについても種々の解析を順調に行っている。
今回のGWASの結果をより信頼できる結果にすべく,異なる集団での追認試験を行うことが必要であり,これが次の研究目的である.さらに、アレルギー性鼻炎に関する遺伝的な関与について明らかにすることが今後の研究の目標である。
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Allergology International
巻: 67 ページ: 292, 294
10.1016/j.alit.2017.10.005.