研究課題
本研究ではALK肺癌の上皮間葉転換(EMT)による獲得耐性を克服する新規治療法の開発を目的としている。これまでのin vitroでの検討より、薬剤Aが間葉系の耐性株を上皮系へ転換させALK-TKIへの感受性を回復させることを見出してきた。そこで本研究では薬剤Aのin vivoでの効果を検証した。まず、ルシフェラーゼで標識したクリゾニブ耐性株(間葉系)をマウス胸腔内に移植した。薬剤Aで5日間の前治療を行った後、クリゾチニブへ切り替えて治療を続け、その腫瘍縮小効果をイメージングで経時的に追跡した。その結果、薬剤Aの前治療群はコントロール群に比べて有意に腫瘍の縮小を認めた。また、薬剤Aでの治療後、腫瘍組織をEMTマーカーによる免疫染色を行ったところ上皮系への転換を認めた。さらに、次世代ALK-TKIであるアレクチニブへの治療効果についても同様の結果が得られた。これらより、in vivoモデルにおいても、薬剤Aが有効であることが示唆された。これまでの検討から薬剤Aは耐性株のmiR-200cの発現上昇を介して上皮系へ転換させることを明らかにしている。そこで、薬剤A以外にも上皮系へ転換できる候補薬を見出すために、miR-200cプロモーター領域とルシフェラーゼ遺伝子を連結したベクターを構築し、レポーターアッセイ系を確立した。430種類の薬剤でスクリーニングを行った結果、新たに10種類のmiR-200cの発現誘導可能な候補薬を見出した。本研究より、ALK肺癌のEMTに起因するALK-TKI耐性獲得後の腫瘍において、miR-200を標的とした薬剤は間葉系腫瘍を上皮系に誘導し、逐次的にALK-TKIで治療することで耐性を克服できる可能性が示唆された。今後はより安全性の高い薬剤を選抜し、臨床開発につなげていきたい。
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