研究課題
当院で診断した間質性肺疾患合併多発性筋炎/皮膚筋炎症例の診断時保存血清や気管支肺胞洗浄液(BALF)を用いて、以下の解析を行った。[1]保存血清を用いて筋炎特異的抗体(MSA)の測定を行い、患者群をMSAサブグループに分類し、臨床情報との関連を解析した。連続60例のうち、抗ARS抗体陽性例が26例(43.3%)、抗MDA5抗体陽性例が15例(25%)、抗SRP抗体陽性例が3例(5%)、抗TIF1γ抗体陽性例が1例(1.7%)、残りの15例(25%)がMSA陰性であった。抗MDA5抗体陽性群は他群と比較して、急性/亜急性発症のILDが多く、血清フェリチン値が有意に高く、血清KL-6値高値の割に血清SP-D値が極端に低かった。また、初期治療後の90日生存率が最も低かった。しかし、初期治療成功例のほとんどが長期生存していた。一方、抗ARS抗体陽性群やMSA陰性群は半数以上が慢性発症のILDであり、初期治療反応性は良好で、90日生存率は抗MDA5抗体陽性群と比較して有意に良好だった。特に、抗ARS抗体陽性群は長期予後も良好であった。本疾患では、MSAサブグループ毎に臨床的表現型や治療反応性・予後が大きく異なるため、診断時のMSA測定が治療戦略決定のために重要であることが示唆された。[2] LS-MS/MSを用いたショットガンプロテオミクス法にて、患者のBALF中に検出されるタンパクを網羅的に同定し、臨床情報との関連を解析した。BALF中にはマクロファージ関連分子の検出頻度が有意に高く、その分子プロファイルをもとに、血清中のいくつかの分子を測定した。その結果、血清CD163やキチナーゼ3様タンパク1(YKL-40)が本疾患の重症度や疾患活動性、予後と関連することが明らかになった。これらの分子は本疾患の新しいバイオマーカー候補となる可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
本年度予定していた筋炎特異的抗体と本疾患の臨床的特徴との関連が検討できた。また、ショットガンプロテオミクス手法によって気管支肺胞洗浄液を用いて新規バイオマーカー候補を発見した。次年度は血清を用いたプロテオーム解析を予定している。
今後は検体の収集を続け、気管支肺胞洗浄液よりも複雑な分子プロファイルを形成している血清や病理組織を用いたプロテオーム解析を予定している。
今年度は、筋炎特異的抗体やYKL-40などのバイオマーカーに関する研究や、血清プロテオーム解析に関しては実験系の確立や検体収集が中心となっており、予定していた血清の網羅的プロテオーム解析は次年度に行う方針としたため。
次年度の血清網羅的プロテオーム解析に用いる予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 8件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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