研究課題
非小細胞肺癌に対する上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬の皮膚障害は最も一般的な毒性であり、そのマネージメントに苦慮することがある。近年、上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬のざ瘡様発疹または爪周囲炎に対するアダパレン外用薬の有効性が報告され始めている。エルロチニブ誘発皮膚障害におけるアダパレンの機能的メカニズムを解明することを目的に解析を行った。方法としてヒト皮膚ケラチノサイト細胞株であるHaCaT細胞を使用して、エルロチニブと炎症性サイトカインを投与して、エルロチニブによる皮膚毒性を誘発し、qRT-PCRを用いて炎症性サイトカインの産生に対するアダパレンの効果を評価した。また、MTTアッセイを用いて細胞増殖に与えるアダパレンの効果を分析した。さらに、アポトーシスに与えるアダパレンの影響と、スクラッチアッセイにより遊走能に与えるアダパレンの影響を解析した。エルロチニブにより炎症性サイトカインであるCCL2、CCL27、IL-8の上昇が、24時間後に認められ、アダパレンはそれらの発現を有意に抑制した(p値はそれぞれ<0.01、<0.05、<0.01)。また、エルロチニブにより細胞増殖の減弱が48時間後に認められ、アダパレンはそれを改善した。一方、アポトーシスや遊走能にはアダパレンの効果は見られなかった。アダパレンは上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬誘導炎症性サイトカインおよび細胞増殖を介して皮膚障害を改善し得ることが示唆された。
すべて 2019 2018
すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)