研究課題
スフィンゴシン1リン酸は、スフィンゴシンキナーゼによりスフィンゴシンがリン酸化して生成される。生成されたスフィンゴシン1リン酸は5回膜貫通型Gタンパク結合型受容体であるスフィンゴシン1リン酸受容体に結合することで細胞内シグナルを伝える。今回、私はスフィンゴシン1リン酸受容体の5つのサブタイプの一つであるスフィンゴシン1リン酸受容体3型に着目して上皮細胞のシグナル伝達に果たす役割を解析した。方法として、気道上皮細胞のBEAS-2B細胞、Calu-3細胞を使用して喘息関連遺伝子の発現をトランスクリプトーム解析を用いて解析した。また、スフィンゴシン1リン酸受容体3型に対するsiRNAを用いて遺伝子をノックダウンしてシグナル伝達に与える効果を調べた。さらに気道炎症におけるCCL20の役割を明らかにするために、卵白アルブミン誘導性の急性気管支喘息マウスモデルを作成して、抗CCL20抗体による治療実験を行った。最後にスフィンゴシン1リン酸受容体3型のアンタゴニストであるVPC23019の抗炎症効果を、卵白アルブミン誘導性の急性気管支喘息マウスモデルを用いて同様に解析した。スフィンゴシン1リン酸の刺激により気管支喘息関連遺伝子であるADRB2とPTGER4、CCL20の発現の上昇が見られた。また、スフィンゴシン1リン酸受容体3型をノックダウンすると、スフィンゴシン1リン酸誘導性のCCL20の産生が抑制された。卵白アルブミン誘導性の急性気管支喘息マウスモデルにおいて、抗CCL20抗体は気管支肺胞洗浄液中の好酸球数を有意に抑制し(P<0.01)、VPC23019も好酸球性の炎症をしっかりと抑制した。スフィンゴシン1リン酸とその受容体3型は気道上皮からの炎症関連サイトカインの産生を介して重要な役割を果たしており、今回の研究からこの経路が気管支喘息の重要な治療標的となる可能性が示唆された。
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PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0203211
10.1371/journal.pone.0203211