研究課題
EGFR 遺伝子変異を伴う肺癌は,日本人の非喫煙者に発生する肺がんの半数以上を占め,非常に重要な疾患群である。EGFR チロシンリン酸化阻害薬(TKIs)は,がんの直接的な原因であるEGFR の増殖シグナルを阻害することで劇的な効果を示すものの,獲得耐性が生じることが未解決の課題である。その耐性機序の50-60%は,耐性遺伝子変異であるEGFR T790M であることが知られている。本研究では,EGFR 遺伝子変異を有する既知の肺癌細胞株のマウス皮下腫瘍腫瘍モデル,遺伝子改変マウスおよび患者組織の直接移植モデルを用い,EGFR-TKIs,抗EGFR 抗体および血管新生阻害薬を併用し集学的にEGFR を阻害することで耐性を克服するのみならず,長期的な肺癌の制御,治癒を目指した治療戦略の基礎的検討を行い,臨床試験のための基礎データ収集することを目的としている。① in vitro における検討として,MTT アッセイ法を用い,複数の肺癌細胞株に対するEGFR 阻害薬AZD9291 のIC50 を測定し、AZD9291 がEGFR 遺伝子変異を持つ肺癌細胞に特異的に効果を示すことができた。② 皮下腫瘍マウスモデルとして,細胞を200 万/mouse で皮下投与し10 日後に腫瘍形成を確認し,薬剤投与を開始する。コントロール群・AZD9291 単剤群・Cetuximab 単剤群・Bevacizumab単剤群・AZD9291/Cet 併用群・AZD9291/Bev 併用群・AZD9291/Cet/Bev 併用群の効果を検証した。AZD9291 は10mg/kg/Day 経口投与,その他の薬剤は前研究を踏襲し(Kudo et al Mol Oncol 2017),Cet は0.1mg/body を週1 回,Bev は,2 mg/kg を週2 回 腹腔内投与としたが、忍容性十分で、薬剤の増量が可能であった。現状、AZD9291単剤よりAZD9291/Cetu,AZD9291/Bev、またAZD9291/Cet/Bevがさらに優れた腫瘍抑制効果を示すことを確認した。
2: おおむね順調に進展している
in vivoマウスモデルで併用治療の有効性を検証したが、仮説通りに有効性を確認することができた。
In vivoで併用治療の有効性の再現性につき条件を変えて検証行う。また併用治療がなぜ有効かについてそのメカニズムの探索、検証していく予定である。
実験計画はおおむね予定通り進行している。マウス、試薬などを効率的に使用することができ、13297円翌年に繰り越すこととなった。来年度は、併用治療の機序の探索を行う予定である。マウス飼育費、PCR,免疫染色など試薬に使用予定である。
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