EGFR発現量を制御しうるsiRNAについてin vitroにおけるEGFRシグナリングが下流において低下していることを確認した.また,EGFRシグナル依存性細胞株について,惹起される細胞死がapoptosisであること,EGFR-TKIに耐性化した細胞株においても奏功することも確認された.exon 19欠失細胞株と,exon 21 L858R点突然変異株においては,EGFR蛋白の抑制がいずれも強く認められたが,その細胞死の程度については後者において弱く,EGFRへの依存性がその遺伝子変異の種類によって異なることが示唆された.しかしながら,EGFRトランスジェニックマウスモデルにおいて,ヒト型EGFRのexon 21 L858Rを組み込んだモデルにおいては,CDP-AD-PEG-TfでsiRNAをナノ粒子化し尾静脈投与すると,CT上の粒状影が軽快した.一方,xenograftモデルにおいて,EGFR-TKI耐性であるRPC-9に同様に尾静脈投与を行ったが,有意差をもった明確な縮小効果は得られなかった.これはトランスジェニックマウスにおけるsiRNAの必要投与量と,xenograftマウスモデルにおける必要投与量の違いが異なるためと思われ,PEG抗体により送達効果の違いについて検討を行った.また,xenograftモデルにおける投与量を増大させ,かつ,投与方法として皮下注射を選択した場合,コントロールsiRNAに対して腫瘍増殖抑制効果が認められた.本研究ではEGFRトランスジェニックマウスにおいて,CDP-AD-PEG-Tfにてナノ粒子化したsiRNAにより,抗腫瘍効果は期待されたが,xenograftにおける結果については投与法を従来設計と変更する必要がある.
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