間質性肺炎は、肺の間質に慢性的な炎症・線維化を伴う疾患であり、その機序については不明な点が多く、予後も極めて悪い。ペリオスチンは細胞表面上のインテグリンに結合して炎症性のシグナルを誘導する作用を有する細胞外マトリックスタンパク質であり、我々の研究室では、ペリオスチンが間質性肺炎における肺の線維化の形成過程において重要な役割を果たしていることを以前明らかにしている。本研究においては、間質性肺炎におけるペリオスチンを介した炎症シグナル、ならびに線維化機構の解明を目指し、ペリオスチン―インテグリン間の結合を標的とした阻害剤の間質性肺炎に対する治療効果を検討している。 前年度においては、インテグリンに対する阻害効果が期待される20種類の薬剤の効果の比較検討を行った。その結果、5種の薬剤が有為に抑制することを見出した。次に、炎症に対する抑制効果に関しても検討を行った結果、この5種の薬剤は炎症を有為に抑制することを明らかにすることが出来た。また、薬剤の阻害効果が、それぞれ相関することも見出している。 本年度は前述の5種の薬剤のうちの1つの薬剤がペリオスチン―インテグリン間の結合を特異的に阻害する効果を有し、かつ副作用が少ないことが期待されている。その為、この薬剤を間質性肺炎のモデルマウスに投与する実験の条件検討を行った。この薬剤が腸管からの吸収が悪いことが示唆されているため、マウスの皮内に投与し、持続的な効果を期待できる浸透圧ポンプを用いた解析を試みた。 いくつかの条件検討を行った後、実際にブレオマイシンを気管内に投与する肺線維症モデルマウスを作製し、薬剤の効果を検討した。結果としては、劇的な効果を認めなかったが、幾つかのパラメーターで有効な結果を得ることが出来た。 今後は、より詳細な条件検討を実施し、薬剤の効果をより検討する必要がある。
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