研究課題/領域番号 |
16K19458
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
俣木 浩子 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (60750750)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核酸 |
研究実績の概要 |
慢性炎症性肺疾患である特発性肺線維症は高頻度に肺癌を合併する。慢性炎症の分子シグナルが癌を誘発する可能性があるが、肺の線維化から癌化への移行機序は明らかではない。 申請者らは肺癌の癌抑制性マイクロRNAより細胞外マトリックスに関連する遺伝子群を制御するマイクロRNAがあることを最近明らかにした。さらにこれらの癌抑制性マイクロRNAは肺線維症の病変部においても発現が抑制されていることが判明した。 本研究では、特発性肺線維症・肺癌臨床検体を用いて、疾患特異的に活性化している分子経路を検証する。マイクロRNA導入細胞の網羅的な発現解析、データベースの活用、臨床検体の発現情報を組み合わせる事で、マイクロRNAが制御する蛋白コード遺伝子、分子経路の探索を行う。 一例として、肺癌の癌抑制性マイクロRNAであるmiR-29は肺癌の臨床検体で発現が抑制されており、癌抑制性マイクロRNAであることは明らかとなっている。miR-29は細胞外マトリックス分子であるLOXL2やSERPINH2を抑制しており、肺癌、肺線維症の双方の病態において関連している可能性を見出した。 そこで、本研究では、今回見出した肺癌の癌抑制性マイクロRNAと肺癌合併肺線維症におけるマイクロRNA発現プロファイルを起点として、特発性肺線維症・肺癌に共通する機能性RNAを探索し、両者の病態に関わる分子経路を明らかにする。さらに、同定した分子経路を遮断することにより、肺の線維化、肺癌の進展を抑制する新規治療法を提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者が有している肺癌のマイクロRNAの発現プロファイルから発現が抑制されているマイクロRNAについて予備検討を行った。 肺癌の臨床検体で発現が抑制されており、癌抑制機能を持つ癌抑制性マイクロRNAの中でも、肺癌、肺線維症に共通して発現が抑制されているマイクロRNAが存在することが明らかとなった。さらにゲノム科学的手法によりそれらマイクロRNAが制御し、疾患特異的に活性化している分子経路の予備検討を行っている。 さらに、今後は肺癌を合併した肺線維症の臨床検体よりマイクロRNAの発現プロファイルを作成し、疾患特異的な分子経路の探索をすすめることを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28 年度の研究成果を受けて、特発性肺線維症・肺癌 臨床検体を用いて、疾患特異的に活性化している分子経路を見出す。 特発性肺線維症・肺癌で活性化している分子経路の遮断法について、in vitro/in vivo において検証する。活性化されている分子経路を遮断する方法は幾つか存在するが(分子標的薬、抗体、アンチセンスRNA など)、現実の治療を考慮すると、既存の治療薬の適応拡大が現実的である。活性化シグナルの起点が細胞表面の受容体であれば、現在、臨床で使用されている分子標的薬を組み合わせた治療が考えられる。候補となる既存の治療薬を 探索し、その有効性をin vitro/in vivoで検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が一部遅れているため、次年度に繰り越して研究を予定しております。
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次年度使用額の使用計画 |
肺癌を合併した特発性肺線維症の臨床検体よりmiRNA発現プロファイルを作成し線維化病変・癌部で共通して発現が変動しているmiRNAを探索する。これらのmiRNAについて肺癌・肺線維症臨床検体における発現を調べる。更に、発現が抑制されているマイクロRNA については、細胞増殖・ 遊走・浸潤・アポトーシス誘導などの機能解析を施行する。肺癌・肺線維症双方の臨床検体で、発現抑制が確認できたmiRNA については、ゲノム科学的手法により、miRNA が制御する分子経路を明らかにする。特発性肺線維症・肺癌で活性化している分子経路の遮断法について、in vitro/in vivo において検証する。活性化シグナルの起点が細胞表面の受容体であれば、現在、臨床で使用されている分子標的薬を組み合わせた治療が考えられる。候補となる既存の治療薬を探索し、その有効性をin vitro/in vivoで検証する予定である。
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