研究課題/領域番号 |
16K19463
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
熊本 牧子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10623522)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 特発性肺線維症 / 線維芽細胞 / 脂肪由来間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
特発性肺線維症(IPF)には未だ有効な治療手段がなく、新規治療法の開発は急務である。我々はブレオマイシン(BLM)肺線維症モデルにおいて骨髄由来間葉系幹細胞の有効性を明らかにしてきた。本研究では 低侵襲で確保が容易なヒト脂肪由来間葉系幹細胞(ASC)の線維化抑制効果について検証し、その抗線維化のメカニズムを解明する。BLM肺線維症マウスモデルにおけるASCの抗線維化効果は実験を繰り返して確認できている。 しかしBLM肺線維症モデルは実際のIPFの病態とは異なる点が多く、より実臨床に近いモデルでの実験が必要である。既存の論文にてヒトIPF患者の肺から培養したfibroblastをSCIDマウスに投与することでマウス肺に線維化が起こり、よりIPF患者に近いモデルであることが報告されている。この報告を基に我々は、当院呼吸器外科にて肺癌に対する肺切除術施行された肺癌合併IPF患者の切除肺の線維化部位を、当大学の倫理委員会の承認を得た上で、提供いただき、検体から培養したfibroblastをSCIDマウスに投与し、ヒト化特発性肺線維症SCIDマウスモデルを作成することに成功した。このマウスに培養ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(hASCs)を抗線維化効果を期待して投与したが、現時点では明らかな抗線維化作用は認められなかった。現在様々な投与タイミングや、投与回数、投与経路を試しており、抗線維化作用が得られるか検討を重ねている。 また、肺線維症のメカニズムを解明するため、IPF患者の非線維化部位と線維化部位から培養した線維芽細胞の違いを検索している。培養後の形態は明らかに異なり、MTTアッセイでも増殖能の違いを確認できている。また遺伝子発現の差異を検索したところ、数個の候補遺伝子を確認しており、治療ターゲットや病態把握のマーカーとなりうるかどうか、検討を重ねている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IPF患者様の肺組織は順調に提供していただけている。しかし検体によってfibroblastの増殖速度が遅いものもあり、必要細胞数になるまでに予測より時間がかかっている状況である。また新規肺線維症マウスモデルの作成には1か月以上の期間を要する上に、個々のfibroblastによって、線維化が著明でない場合もあるため、予測よりもやや進捗状況が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
患者様の肺検体は順調に提供いただいており、in vitroにおけるfibroblastの解析も進んでおり、繰り返しの実験でデータの信憑性も確実になりつつある。今後は様々な手法でターゲット遺伝子の病態への関わりを検討し、治療に繋げていきたい。 in vivoの実験は、一つの長期間を要するため、時間はかかるが、並行していくつもの実験を行うことで時間の短縮をし、また実験を重ねることで、データを確実なものにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が平成30年3月より産休に入っているため、妊娠中も含めて実験の遂行が予定通りにいかず、次年度使用額が生じてしまった。 産休・育休から復帰後、研究を進めていくに際して、使用する予定である。
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