研究課題/領域番号 |
16K19464
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
赤松 弘朗 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (10646582)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Liquid biopsy / 血中循環腫瘍細胞 / cell free DNA |
研究実績の概要 |
初年度として、研究プロトコール「免疫チェックポイント阻害剤における効果・副作用因子を検討する、腫瘍組織・血液を用いたバイオマーカー研究」を立案し、院内倫理審査の承認を得た。次に、進行非小細胞肺癌を対象とした末梢血バイオマーカーについて検体採取と保管体制を構築した。本報告書作成時点で、免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブ・ペムブロリズマブを投与した患者(それぞれ40例・3例)について末梢血採取を採取しており、投与前のみならず治療後も定期的に保管する予定である。 血中バイオマーカーのうち循環腫瘍細胞については、Abcam 22c3抗体を用いたPD-L1発現の免疫組織化学染色を行った。ねお将来のcell free DNA解析のために、血漿分離を同時期に行い一部を凍結保存している。これについては、次年度以降、次世代シーケンサーを用いたmutation burden解析を行う予定である。 現時点で循環腫瘍細胞については29例の解析を行っている。全例で腫瘍細胞が検出され、中央値は15個/5mL(範囲1-90個/5mL)であった。このうちPD-L1陽性と判断したものは87%であった。うち14例では原発巣など腫瘍組織におけるPD-L1発現との比較を行ったが、相関は認められなかった(R2 = 0.0035)。治療後の細胞数の変化と免疫チェックポイント阻害剤の治療効果についても検討したが相関は認めなった。ただし治療開始前におけるPD-L1陽性細胞が50%以上を占める症例では、それ以外に比して病勢制御率が有意に高かった(p <0.05)。 以上より、治療前の血中循環腫瘍細胞におけるPD-L1発現割合は免疫チェックポイント阻害剤の効果予測因子となる可能性が示唆され、今後症例集積を行って検討する。 以上の結果については2017年度の米国臨床腫瘍学会、日本肺癌学会総会で報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検体の集積ペースは概ね予定通りであり、循環腫瘍細胞を用いた検討も順調に進んでいる。一方でcell free DNAを用いた次世代シーケンサーの検討については、ある程度の検体数が保管された後に一括での解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き症例登録を促進し、検体の保管に努める。血中循環腫瘍細胞については効果との相関のみならず、原発巣を含めた腫瘍組織におけるPD-L1発現との相関も検討し非侵襲的なバイオマーカーの確立を検討する。cell free DNAについては解析費用の問題もあり、一定数の検体が保管された時点での解析を予定している。
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