研究課題
各種肺癌細胞株を皮下移植したxenograftを作成し、血管新生阻害薬であるBIBF1120及びBevacizumab単剤治療、EGFR-TKI(Erlotinib)単独治療、Erlotinib+Bevacizumabの併用治療を各タイムスケジュールで投与した。摘出した腫瘍検体を用いて腫瘍内の代謝産物の動態をImaging massspectrometry(IMS)で評価することに成功した。BIBF1120治療群では血流マーカーである赤血球内の2,3-DPGが低下し解糖系の代謝フラックスが上昇し、ATPが顕著に減少した。またpimonidazoleによる免疫染色ではBIBF1120治療により低酸素領域が増加した。以上よりBIBF1120による治療では腫瘍内への血流が低下し腫瘍内が低酸素環境となり解糖系代謝経路が亢進したと考えられた。一方で、Bevacizumab治療群では腫瘍への血流は変化せずBIBF1120とは逆に腫瘍内ATPが上昇しており、BIBF1120とBevacizumabで肺癌細胞に与える影響が異なる可能性があることが明らかになった。Xenograftモデルと実際のヒト肺癌では周囲の微小環境が異なる事が予想され、今後は臨床の現場から得られたヒト肺癌検体を用いて、Bevacizumab投与後のヒト検体における腫瘍内代謝動態を評価する予定である。血管新生阻害薬の代謝に与える影響については未だ明らかとなっていない点が多いが、今回血管新生阻害薬の種類の違いにより異なる代謝がもたらされることはこれまで報告されていない新しい知見である。血管新生阻害薬の代謝に与える影響や機序を更に検討することでチロシンキナーゼ阻害剤が最も抗腫瘍効果をもたらす血管新生阻害薬との組み合わせや投与タイミング等を検討することができ、患者の予後延長に寄与するものと考えられる。
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Cancer Research
巻: 77 ページ: 2078-2089
10.1158/0008-5472.CAN-16-2359.