研究課題/領域番号 |
16K19467
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
星加 義人 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (70772515)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | FLCN遺伝子 / 線維芽細胞 / 肺胞上皮細胞 / 細胞外マトリックス |
研究実績の概要 |
BHD症候群(BHDS)患者4例、正常肺対照(肺癌患者で肺葉切除した際の非癌・正常肺組織)3例からFlow cytometryで分離培養した線維芽細胞の遺伝子発現アレイ解析を行った。正常対照に比べてBHDS患者で2倍以上に発現が増減した遺伝子はなく、ほぼ同等の発現プロファイル結果であった。次に、線維芽細胞を伸展培養装置にセットしてヒトの呼吸と同様の20回/分で伸展刺激を加えてアポトーシスの亢進や遺伝子発現の変化を検討しようとしたが、培養プラスティックシャーレに線維芽細胞が接着が悪く(特にBHD症候群患者由来線維芽細胞でより顕著)、実験系を断念した。同様に、II型肺胞上皮細胞(ATII)をBHD症候群と正常肺からFlow cytometryで分離しマトリゲル内でオルガノイド培養を行った。培養4週間の時点で電子顕微鏡でラメラボディを確認し、SP-C発現を確認し、ATIIであることを確認した。しかし特にBHDS由来ATIIの増殖不良があり、機能解析を行うまでの十分量の培養ができないと判断した。BHDS肺組織6例、正常対照肺組織5例について肺組織をホモジナイズし、細胞外マトリックスタンパク質(コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン)をELISA法あるいは比色法で測定した。コラーゲン、フィブロネクチンは正常肺と有意差がなかったが、エラスチンのみBHDS肺では正常肺より約1.4倍多いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BHDSのATIIの培養、特に解析に使用できるほどの細胞数を得るための継代培養がBHDSでは非常に困難であることを感じている。FLCNが減少していること自体が影響していると考えられ、現状の方法論ではストレッチ仮説を検証するための伸展培養は困難であると感じた。末梢肺組織のプロテオミクス解析は、当初の計画より遅れており未施行であるが、1)線維芽細胞の遺伝子発現アレイ解析(有意差なし)、2)ATII細胞の培養(解析できるほどの細胞数入手困難)、3)細胞外マトリックスタンパク(ECM)で想定外の結果としてエラスチンの増加(各種ECMタンパクの減少)、等の結果をうけ、3年目の少ない予算内で比較的高価な解析費用(委託)を要するプロテオミクス解析は実施するべきかどうか、費用対効果の面で逡巡している。
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今後の研究の推進方策 |
気胸を発症することは臓側胸膜の病変の存在を意味し、臓側胸膜の最も重要な機能細胞として中皮細胞の重要性に注目している。予備実験として肺組織から中皮細胞を培養し、正常肺由来の中皮細胞と比較検討したところ、形態、増殖能に相違が認められた。3年目は、BHDS肺の研究対象細胞として、線維芽細胞、ATII細胞のみならず臓側胸膜中皮細胞にも着目して研究を行い、BHDSでの気胸発症のメカニズムを考察する一助として加えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画通りに遂行できない可能性、その打開策を検討したため、予算を使い切れなかった。3年目に若干の繰り越しとなったが、研究対象細胞に中皮細胞を加えることを考えているため、有効に活用する方針である。
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