研究課題/領域番号 |
16K19470
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
小谷 卓矢 大阪医科大学, 医学部, 助教 (80411362)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 間質性肺炎 / 脂肪幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、脂肪組織由来幹細胞(AdSCs)を用いた間質性肺炎モデルマウスに対する新規治療研究である。AdSCsを間質性肺炎マウスの尾静脈より移植し、その炎症・線維化に対する抑制効果を検討した。その結果、AdSCsは細胞数依存性に肺の炎症及び線維化を有意に抑制することを確認した。更に、AdSCsは間質性肺炎モデルマウスの生命予後を有意に改善させた。続いて、AdSCsの炎症細胞に対する抑制機序をin vitroの研究で検討した。AdSCsは活性化マクロファージに対してアポトーシスを誘導し、AdSCsは活性化マクロファージが合成するIL-12, TNF-αなどの炎症性サイトカインの遺伝子発現を抑制する結果を得た。次に、AdSCsがTリンパ球に及ぼす影響を検討したところ、Th2 type Tリンパ球の分化増殖を抑制し、制御性Tリンパ球の分化増殖を有意に誘導している結果が得られた。以上のことから、活性化マクロファージとTh2 type Tリンパ球を機能的に抑制し、制御性T細胞を誘導する機序により、AdSCsが間質性肺炎モデルマウスの肺の炎症抑制に作用していることが示唆された。これらの結果は、平成29年3月の日本再生医療学会総会において発表した。また、現在英文雑誌(Scientific Reports)に投稿中である。 現在、AdSCsの線維化の抑制機序を検討するin vitroの研究を行っている最中である。また、AdSCsの肺における組織再生に及ぼす影響を検討中である。更に、肺線維化が完成した間質性肺炎の慢性期におけるAdSCsの治療効果の検討実験も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画段階で予定していた、脂肪組織由来幹細胞(AdSCs)の間質性肺炎モデルマウスに対する肺の炎症・線維化に対する抑制効果をin vivoの研究で証明した。 また、AdSCsの炎症細胞に対する抑制効果もin vitroで研究を行い、良好な結果を得ている。上記の内容を、日本再生医療学会総会にて学会発表を行い。既に英文雑誌(Scientific Reports)に論文投稿もすんでいる。おおむね当初の予定通り順調に研究が経過し、結果を報告するに至っていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、AdSCsの肺における組織再生に及ぼす影響を検討中である。また、肺線維化が完成した間質性肺炎の慢性期におけるAdSCsの治療効果の検討実験も開始しており、引き続き研究を継続してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、予定通りに研究が遂行できたため、マウスの購入や消耗品に研究費を使用し、既に当研究室が所有していた抗体を用いるなど必要最小限の出費で抑制できた。しかし、次年度は、脂肪組織由来幹細胞(AdSCs)の炎症細胞に対する効果の検討を更に予定しており、フローサイトメトリ―用の抗体、細胞に取り込ませる組織標識抗体、ELISA用の抗体など、当該年度を超える研究費の使用が予測できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
脂肪組織由来幹細胞(AdSCs)の炎症細胞抑制に対する機序の解明のため、フローサイトメトリ―用の抗体、細胞に取り込ませる組織標識自己抗体、EILSA抗体などの購入を予定している。他に、マウス購入費、得られた結果の学会報告用経費、論文化に向けた必要経費を計上予定している。
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