研究課題/領域番号 |
16K19472
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
小田 桂士 産業医科大学, 医学部, 助教 (00625527)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 特発性肺線維症 / 細菌叢解析 / miRNA |
研究実績の概要 |
本年は①特発性肺線維症患者から採取した気管支肺胞洗浄液の解析、②肺内細菌叢に関連するmiRNAの同定を行った。①については昨年と同様に核酸抽出作業、核酸定量、ライブラリー作成(16S rRNA領域の増幅)、シーケンスライブラリーの作成、シ ーケンス解析を行い、②については特発性肺線維症急性増悪患者で特異的に増加・減少しているmiRNAに注目し、細胞実験を追加した。なお、核酸抽出作業は、昨年と同様にNucleoSpinMicrobialDNA(MACHERN-NAGEL社)を使用し、核酸定量は精製作業と2本鎖DNA定量 を引き続き行い、精製作業ではAMPureXPを使用した精製処理を実施した。ライブラリー作成は16S rRNA領域の増幅、シーケンスライブラリーの作成を行った(シーケンスライブラリー品質検定も同時に行った)。シーケンス解析はイルミナ社シーケンサーを用いた。 ②については、患者血清を用いてマイクロアレイを実施し、特異的なmiRNAの検出を行ったうえで、レンチウイルスを用いて、肺胞上皮細胞内に遺伝子導入を行い、特異的なmiRNAの過剰発現、過剰抑制細胞の作成を行った。①は昨年と同様に気管支肺胞洗浄液からは通常の培養で解明できない複数の菌種の同定に成功しており、引き続き肺内に存在する多様性の変 化に注目し解析している。②については、今後動物実験に移行する予定である。今後は 、肺内常在菌とエピジェネティクス制御の検証を継続し、(i)肺内細菌叢の変化に伴うヒストンアセチル化、DNAメチル化とHDACを用 いた抑制実験、(ii)線維化に関わるタンパク質の検証、(iii)遺伝子変異との関連について検証を加える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたIPF患者における①IPF患者における肺内細菌叢の検証、②IPF患者における肺内常在菌の起源の検証、③肺内 細菌叢が予後に与える影響について遅延なく行うことができている。 また、昨年度は病態解明の手段としてmiRNAの発現に注目し、特異的に増加・減少しているmiRNAの同定に成功した。 現在、症例集積は順調であり、今後も引き続き気管支肺胞洗浄液から拡散抽出、定量、ライブラリー作成、シーケンス解析を行い、これまでの検証結果に矛盾がないか確認を行う予定である 。また、特定の菌種が肺内に及ぼす影響を評価しつつ、miRNAを肺胞上皮内に過剰発現・抑制実験を行い、さらにRNA-seqを追加することで、ゲノム解析も実施する予定である。今後も臨床研究を推進しつつ動物実験を行い、肺内常在菌とエプジェネティクスについて検証を継続する予定である。このように、当初の予定通り、研究を実施できているため、”おおむね順調に進呈している”と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は本研究における研究成果をまとめる予定である。また、特発性肺線維症は有病率の低い疾患であるため、症例の集積に難渋することが予想され、多施設での検討を行えるように推進する。 さらに、抗線維化薬も登場し、治療選択肢も広がったため、今後は予定されていた検証を継続するとともに、新規に登場した抗線維化薬による治療との関連や、急性増悪との関連についても検討を行う予定である。また、積極的に日本感染症学会、呼吸器学会をは じめとした国内外の専門学会で学会発表を行うことにし,他の研究者の意見を仰ぐことにしている。さらに、すでにIPF患者の細菌叢 解析は予備実験の段階において,滞りなく実施可能であることを確認しているが、想定外の結果や問題発生時には,学内外の研究者と 連絡を取り合える状況を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定どおり3年計画であるため、次年度使用額が生じた。 理由としては、PCR測定用のカスタムパネルの作成等の委託費が若干安くできたためである。 研究計画に基づき、必要に応じて支出する予定である。
(使用計画) 研究計画に基づき、主に細菌叢解析、及びPCRで使用する試薬吸入などに支出する予定である。
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