研究課題/領域番号 |
16K19475
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永井 恵 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (00734352)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抗好中球細胞質抗体 / 加齢 / ミエロペルオキシダーゼ / ペントラキシン |
研究実績の概要 |
本邦のANCA関連血管炎(AAV)は、MPO-ANCA陽性例が多く、高齢者に好発する。そこで、高齢者のAAV発症原因と考えられるMPO-ANCA産生に関してヒト検体ならびに動物モデルの両面から検証する。 好中球含有顆粒の量および質の変化がMPO-ANCA産生に関与すると仮説し、第一に、健常者およびAAV患者の好中球内顆粒MPOおよびPTX3の加齢による変化を明らかにする。本年度は、研究計画が倫理審査を通過し、数例の健常者およびAAV患者の好中球を解析した。イメージングフローサイトメトリー法を用いた、MPOおよびPTX3の発現強度と局在の解析法を樹立した。また、AAV患者も健常者同様に細胞質内のPTX3が発現していることを明らかにした。加齢による変化や健常者とAAV患者との比較をするためには、解析数の集積が今後必要である。 好中球から顆粒物質および自己核酸を放出する細胞死;NETosisは抗体産生を促すため、第二に、動物実験でNETosisが与えるMPO-ANCA産生機構への影響を解明する。腹腔内アルミニウムゲル(Alum)投与は、腹腔内の炎症細胞のNETosisを誘導することが知られており、これが免役アジュバンド効果として働く。これを応用し、MPO遺伝子欠損マウスに対して、リコンビナントMPOとAlumを同時投与することで、MPO-ANCA産生を誘導するモデルを樹立した。 PTX3は抗体産生系を負に制御し、AAVに頻発する感染合併症に対して防御的に働くため、第三に、PTX3を標的分子としたAAVの新規治療法確立を目指した。本年度は、前項のMPO-ANCA産生モデルにおいてリコンビナントPTX3を同時投与することで、抗体産生価を減弱させられるかを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト研究として倫理委員会が終了し、数例の解析済みである。イメージングフローサイトメトリによる好中球細胞質顆粒の発現量および局在解析が重要であり、条件検討は終了した。健常コントロールと同様にAAV患者由来の好中球内にPTX3が発現することを示すことができた。また、MPOの細胞内発現量は、AAV患者において健常コントロールと比較して少ないが、PTX3の発現量は同等であることが確認できた。 マウス研究を研究計画(平成29年度・30年度で実施予定)に先んじて実施しているが、NETs形成時のPTX3放出をin vivoで確認することができた。現在は、リコンビナントPTX3の機能実験を実施している。仮説通り、PTX3がMPO-ANCA産生を減弱する結果、およびその再現性が認められれば、好中球顆粒分子がMPO-ANCA産生を制御している新しい知見として、論文投稿が考慮される。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト研究に関しては、AAV発症者および高齢者に特徴的な傾向を検証できるだけの症例数が実施されておらず、検体採取時期の検討中である。 マウス実験に関しては、マウスラインの調整に時間がかかるため、本年度では加齢マウスと若年マウスとの比較ができていない。マウスの調整が出来次第、順次in vivo実験系を行う。in vivo実験の次には、Alum投与によりNETosisを誘導した場合の、加齢と若年の比較をより詳細に行うためのin vitro実験を計画する。
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