本研究の研究代表者はヒストン修飾酵素阻害薬の一つであるDznep (3-deazaneplanocin A)を慢性腎不全モデル(片側の虚血再灌流障害モデル)に投与すると、線維化が抑制されることを見出した。In vivoのサンプルからLaser Capture microdissectionによって尿細管細胞のみを切り出し、Vehicleを投与した対側腎、Vehicleを投与した虚血再灌流腎(障害腎)、Dznepを投与した障害腎について、遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、発現パターンは3つに分類されることを見出した。研究代表者はその中でも特に、障害腎で発現が上昇するものの、Dznep投与により発現が減少するパターンの遺伝子群に着目して解析した。その結果、線維化を促進させる遺伝子群が多く含まれていることを見出した。さらに、in vitroの実験で腎尿細管細胞株(HK2:human kidney-2およびRPTEC: renal proximal tubular epithelial cells)を用いて、低酸素刺激に暴露した際、Dznepを投与したときに発現が抑制される遺伝子群についても網羅的に解析した。その結果、in vivoおよびin vitroの両方で、Timp2(tissue inhibitor of metalloproteinase 2)は腎障害が惹起されることによって発現が上昇し、Dznepを投与することにより発現が低下する変動パターンを示すことを見出した。網羅解析によって得られた結果はqPCR実験により結果を検証し、結果が合致することを確認した。以上の結果から、腎線維化の進行をDznepが抑制するメカニズムとして、線維化促進遺伝子群の発現を抑制する可能性が示唆された。
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