研究課題
本研究の研究代表者が所属する研究室では、慢性腎臓病の進行に寄与する機序について研究を進めている。ヒストン修飾酵素は様々な種類がこれまでに同定されているが、代表研究者は、ヒストン抑制マークであるH3K27me3の阻害薬の一つであるDznep (3-deazaneplanocin A)を慢性腎不全モデルに投与すると、線維化が抑制されることを見出した。Dznepを投与した障害腎について、遺伝子発現を網羅的に解析した結果、障害腎で発現が上昇するものの、Dznep投与により発現が減少するパターンの遺伝子群には線維化を促進させる遺伝子群が多く含まれていた。腎尿細管細胞株を低酸素刺激に暴露した際、Dznepを投与したときに発現が抑制される遺伝子群について網羅的に解析した。これらの実験の結果、Timp2(tissue inhibitor of metalloproteinase 2)は腎障害が惹起されることによって発現が上昇し、Dznepを投与することにより発現が低下する変動パターンを示すことを見出した。以上より、腎線維化の進行をDznepが抑制するメカニズムとして、線維化促進遺伝子群の発現を抑制する可能性が示唆された。次に、Dznepにより発現が抑制される遺伝子メカニズムとして、研究代表者はmicroRNAに着目した。In vitroの実験で、HK2細胞を1%低酸素下で培養した際に発現が抑制されるmicroRNAを網羅的にsmall RNA-seqにより解析したところ、338個のmicroRNAが同定された。一方で、142個のmicroRNAがDznepにより発現が上昇した。この中にTIMP2に結合することでTIMP2の発現を抑制する働きをもつmicroRNAが存在すると想定された。
2: おおむね順調に進展している
研究代表者は同じテーマで引き続き、研究を継続している。Small RNA-seqという新しい手法を用いて、低酸素下において変動するmicroRNAsを網羅的に解析している。
Small RNA-seqにより見出した新規のmicroRNAがDznepによってTIMP2の発現を抑制するかどうかを検討していく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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