研究課題/領域番号 |
16K19478
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
野村 尚弘 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (50735800)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カリウム / 高血圧 / ナトリウムチャネル / クロライドチャネル / カルシニューリン |
研究実績の概要 |
1. カリウムによるカルシニューリンの活性化 マウスに急性カリウム負荷を行った時に起こるナトリウム-クロライド共輸送体(NCC)の脱リン酸化は、カルシニューリン阻害剤であるタクロリムスとその上流の制御因子であるカルモジュリンの阻害剤であるW7によって有意に阻害されるという結果が得られた。一方、マウスを使った動物実験ではProtein phosphatase 1 (PP1)は急性カリウム負荷時には変化せず、PP1阻害剤であるtautomycetinをマウスに投与してもNCCの脱リン酸化は抑制されなかった。このことから、急性カリウム負荷によるNCCの脱リン酸化はフォスファターゼの一つであるカルシニューリンの活性化によって起こると考えられた。また、カリウム負荷後の尿中カリウム排泄の増加はタクロリムス投与によって抑制されることから、カリウム負荷後の尿中カリウム排泄においてカルシニューリンの活性化によるNCCの脱リン酸化が重要であることが示された。この結果は、Kidney International誌(2017 Feb;91(2):402-411)に掲載された。 2.低カリウム食時のNCC活性化に対するClC-K2チャネルの関わり ClC-K2チャネルの必須βサブユニットであるbarttinのhypomorphicマウス(Bsnd neo/neoマウス)を使ってClC-K2チャネルの関わりについて検討を行った。野生型マウスでは高塩低カリウム食を与えるとNCCのリン酸化が亢進(活性化)し血圧の上昇が起こるが、Bsnd neo/neoマウスに高塩低カリウム食を与えてもNCCの活性化は乏しく、血圧上昇も認められなかった。このことから低カリウムに伴う血圧上昇にはClC-K2が深く関わっていると考えれる。この結果については論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、高カリウム負荷によって起こるNCCの脱リン酸化に関わるprotein phosphataseの同定を初年度は培養細胞を用いた実験、2年目に動物実験を行うと計画していたが、すでにマウスを用いた動物実験で高カリウム負荷時のNCCの脱リン酸化はカルシニューリンの活性化によって起こるという結果が得られており、論文において報告を行っている。 ClC-KクロライドチャネルとカリウムによるNCCの活性化との関わりについての検討に関しても、当初の計画では、初年度はbattin hypomorphicマウスを交配し必要数を揃える程度の予定であったが、実際には実験をすでに進められており、高塩低カリウム食という条件下で野生型と比較しBsnd neo/neoマウスでは有意にNCCの活性化が減っているという結果が得られている。この結果についてはすでに論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
カリウムによるカルシニューリンの活性化のメカニズムについての詳細は依然として不明である。カルシニューリンはカルシウム依存性に活性化することが知られているので、高カリウム時にどのようなメカニズムで細胞内カルシウムが増加するのかということを明らかとしたい。また、高カリウムによるカルシニューリンの活性化が腎臓のDCT細胞に特異的なことなのか、他の臓器でも起こっているかについてはまだ検討が行えておらず、腎臓のみならず全身におけるカリウムとカルシニューリンの関連性についても検討したいと考えている。 血管平滑筋細胞における選択的オートファジーを介したKLHL2の分解亢進によるWNK3-SPAK-NKCC1経路の抑制を明らかにするという実験については、まだ十分な検討が行えておらず、このプロジェクトに関しては当初の計画に沿って実験を進めていきたい。具体的にはp62のノックダウン実験を行いカリウムとオートファジーの関わりについて検討を行う予定である。また、当研究室では培養細胞においてCRISPR/Cas9システムを使ったノックアウト方法を確立したため、この方法を使ったノックアウト実験を行うことで、カリウムとオートファジーの関わりについて明らかとしたい。
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