研究課題/領域番号 |
16K19487
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂口 悠介 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (80756817)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | マグネシウム / リン / 腎障害 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病患者の体内に蓄積するリンは尿細管障害を惹起し、慢性腎臓病の進行に関与するため、その対策は重要である。これまで我々は近位尿細管細胞を用いたin vitroでの検討や慢性腎臓病患者を対象にしたコホート研究において、リン過剰による生じる腎障害に対してマグネシウムが保護的に作用する可能性を世界に先駆けて報告してきた。しかし,必ずしもリン・マグネシウム負荷量が血清リン・マグネシウム値に反映されるわけではないため、in vivoにおいてリン負荷によってもたらされる腎障害がマグネシウム負荷によって改善するか否かは不明である。また、リン代謝に対してマグネシウムがどのような影響を及ぼすかも不明である。本研究では高リン負荷で生じる腎障害が食餌中マグネシウム量を減少させることで増悪するかを検証し、その機序としてマグネシウムがリン代謝に及ぼす影響の詳細を明らかにすることを目的とするものである。 高リン・正常マグネシウム食を6週間投与した片腎摘マウスの残存腎では軽度の尿細管障害・間質線維化が認められるのに対して、高リン・低マグネシウム食を投与したマウスではこれらの腎病変が顕著に増悪していた。また、高リン・正常マグネシウム食投与マウスに比し、高リン・低マグネシウム食投与マウスでは血中リン濃度上昇、糞便中リン排泄低下、尿中リン排泄が低下していた。したがって、高リン食を負荷した腎不全モデルマウスにおいて、食餌中マグネシウム量を減少させると、リンの腸管吸収は増加し、腎排泄は低下する。結果として、生体へのリン負荷が増加することで、腎障害が増悪したと考えられた。 本年度は、低マグネシウム食投与によりリンの尿中排泄が減少した機序として、腎臓におけるklothoの発現低下を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
klothoの発現制御にはmTORが関与しており、mTOR inhibitorであるラパマイシンの投与がklothoの発現を増加させるとする報告が存在する。そこで、高リン・低マグネシウム食投与マウスにラパマイシンを投与することでリン利尿が回復するか否かを検証した。予想に反し、ラパマイシン投与マウスではむしろリン利尿は減少した。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、高リン・低マグネシウム食投与マウスにおける腎klotho発現低下の機序に関して、エピジェネティックな遺伝子発現制御機構に着目し、『低マグネシウム食の投与はklotho遺伝子上流CpG islandの高メチル化を介して腎klotho発現の低下をきたす』という仮説を検証している。DNAメチル化はメチル化特異的PCR法により評価している。また、DNMT阻害薬による脱メチル化がklotho蛋白の発現を回復させるかについても検証する。
|