C57BL6マウスに片腎摘を行った後、高リン・正常Mg食または高リン・低Mg食を6週間投与した。腎組織は、高リン・正常Mg食群では軽度の尿細管拡張が認められるのみであったのに対し、高リン・低Mg食群では尿細管障害・間質線維化が顕著に増悪しており、F4/80陽性細胞の高度な浸潤が認められた。また、高リン・低Mg食群で血中クレアチニン濃度が上昇していた。さらに、高リン・正常Mg食群のマウスは全て生存したのに対し、高リン・低Mg食群のマウスの死亡率は73%と高率であった。 次に、高リン食負荷1週間後のリンの出納を評価した。この時点では、血清クレアチニン濃度と食事摂取量について2群間に有意差を認めなかった。しかし、低Mg食群では尿中リン排泄量が低下しており、血中リン濃度が上昇していた。つまり、低Mg食は尿中リン排泄を減少させ、生体内のリンを蓄積させることで、腎障害の増悪に寄与したと考えられた。 低Mg食群における尿中リン排泄能の低下の原因を検索したところ、リン利尿ホルモンである線維芽細胞増殖因子(FGF)23の血中濃度の低下を認めた。しかし、活性型ビタミンD投与によりFGF23を上昇させてもリン排泄は回復しなかった。 FGF23共受容体であるklothoの腎臓における発現を評価したところ、低Mg食群においてklotho発現は減少していた。したがって、低Mg食投与はklotho発現を低下させ、FGF23抵抗性を誘導することでリン利尿不全を惹起したと考えられた。活性型ビタミンD投与は低Mg食によるklotho発現低下を改善させなかった。低リン食投与下でも低Mg食によるklotho発現低下が観察されたことから、リン蓄積とは独立して低Mgがklotho発現低下に関わっていることが示唆された。
|