研究課題
Bone Morphogenetic Protein 4 (BMP4)活性化による転写因子Smad1を介したIV型コラーゲン(COL4)増加は糖尿病性糸球体硬化の一因である。All-trans retinoic acid (ATRA)はレチノイン酸受容体(RAR)と結合し,レチノイドX受容体(RXR)とヘテロダイマーを形成してレチノイン酸結合配列(RARE)と結合し,様々な遺伝子発現を制御する。ATRAは腎炎モデルで抗糸球体硬化作用を示すが,糖尿病性腎症での影響は未解明なため,検討した。CD-1マウスにストレプトゾトシンを12週齢から投与し,糖尿病を誘発した。16週齢からATRAを週3回腹腔内投与し,24週齢で腎組織を解析し,糸球体硬化とBMP4/pSmad1/COL4発現は改善した。培養マウスメサンギウム細胞にATRAを添加すると,BMP4,COL4発現量は濃度依存的に低下した。培養マウスメサンギウム細胞へのRARαアゴニスト添加はβ,γアゴニスト添加より低濃度からBMP4発現を抑制し, RARαノックダウン細胞ではATRA添加でのBMP4低下作用が減弱した。この効果は特にAGE刺激下において顕著であった。マウスBmp4遺伝子上下流8万塩基からRAREを推定し,2箇所の配列にRAREの可能性があることを見出した。ChIP法にてRAREとRAR,RXRとの結合能を解析し,Bmp4遺伝子exon1上流11488-11501塩基のRAREとRARα,RXRとの結合はatRA添加で誘導された。ルシフェラーゼアッセイを,RAREからBmp4遺伝子exon1を含むベクターと,RARE4塩基置換ベクターを用いて施行し,RAREはATRA添加によるBmp4発現抑制に関与することが示唆された。以上より、ATRAによるBMP4制御が新規糖尿病性腎症治療法開発に有用であることが示唆された。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism
巻: 316 ページ: E418~E431
10.1152/ajpendo.00218.2018