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2016 年度 実施状況報告書

klotho遺伝子を介したオートファジー調節による新規治療法の基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K19491
研究機関高知大学

研究代表者

島村 芳子  高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (20554679)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードαKlotho / 慢性腎臓病 / 加齢 / 急性腎障害
研究実績の概要

現在、透析療法に至っている患者数は30万人を越え、高齢化が加わりさらに透析患者の増加が予想される。末期腎不全の予備軍;慢性腎臓病(Chronic kidney disease:CKD)の概念が提唱され、現在本邦のCKD患者数は約1330万人であり成人人口の12.9%を占めている。また、急性腎不全(Acute kidney injurey:AKI)は、患者の高齢化などにより発症頻度は高まっている。高齢での腎機能低下のメカニズムとして、klothoの発現低下、オートファジーの低下、ミトコンドリア機能低下、繊維化がいわれているが機序は不明な点が多い。本研究は、「加齢に伴う腎機能低下、CKD/AKIの予後の悪化の解明」を目的とする。具体的な目標としては、klotho-TGマウスと、オートファジーがモニター出来るLC3-TGマウスを掛け合わせ、klothoとオートファジーの関連とCKD/AKIの病態にもたらす影響を検討し、さらに加齢に伴うミトコンドリア機能低下へのklothoとオートファジーの関与を検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

高齢での腎機能低下のメカニズムとして、klothoの発現低下、オートファジーの低下、ミトコンドリア機能低下、繊維化がいわれているが機序は不明な点が多く、平成28年度はそれらについて下記を検討、学会報告した。
AKIの腎機能予後に関与する因子としてIL-1ファミリーに属するサイトカイン群であり、炎症・免疫作用を司っているIL-36の受容体IL-36Rの機能を検討した結果、AKIにおいてIL36Rは尿細管細胞において発現誘導されIL-1β,IL-6, TNF-αを誘導し、IL36R-KOマウスでは虚血再灌流によるAKIの予後は改善することが分かった。
AKIにおけるミトコンドリア機能異常の検討として酸化ストレスを調節するThioredoxin-interacting protein (TXNIP)の機能を検討し、AKIでは尿細管細胞においてTXNIPが発現誘導され、ミトコンドリア機能を調整し、TXNIP-KO ではAKIの予後が悪化することを報告した。
加齢や虚血による腎機能低下の機序の検討についてはDNA修復に関連するphosphatase 1 nuclear-targeting subunit(PNUTS、別名PP1R10)の加齢およびAKIでの変化ならびに尿細管細胞の細胞周期と繊維化に対する作用を検討した。結果、加齢および低酸素においてPNUTSの発現は低下し、phosphatase の活性の変化が、Caspase活性の変化と細胞周期調整を介して、加齢とAKIの病態に関与している可能性が示唆された。
αKlothoについては、CKD患者において心血管イベントの予後予測因子である血中NTpro-BNP、また心筋障害のマーカーである血清トロポニンTが血清遊離型αKlothoと負の相関を示し、血清遊離型αKlothoが低い症例は心機能が低下している可能性が示唆され、CKD患者において血清遊離型αKlothoが心機能障害の予測マーカーとなる可能性が示唆されることを学会報告した。

今後の研究の推進方策

高齢での腎機能低下のメカニズムとして、klothoの発現低下、オートファジーの低下、ミトコンドリア機能低下、繊維化がいわれているが機序は不明な点が多く、平成28年度はそれらについてIL36R・TXNIP・PNUTS等、また心機能マーカーとαKlothoとの関連を検討した。平成29年度以降はその研究をさらに発展させる。
今後はGFP-LC3-TGマウスを使用し、急性腎障害でオートファジーが引き起こされる新規遺伝子Sestrinに注目し、Sestrinが急性腎障害回復期に近位尿細管細胞で誘導され,LC3-GFPで観察されるAutophagozomeとの局在を共焦点顕微鏡で観察する。GFP-LC3-TGマウス由来の培養尿細管細胞を用いて、Klotho遺伝子の強制発現およびsiRNAによる遺伝子発現抑制系による、オートファジー/マイトファジーの変化とオートファジー関連遺伝子の変化を確認してゆく。
GFP-LC3-TGマウスおよびKlotho-TGマウスのdouble TGマウスを作成し、急性腎障害での腎予後とオートファジーをLC3-GFPで観察されるAutophagozomeとの局在を共焦点顕微鏡で観察する。高齢マウスでオートファジーが低下する事、およびklothoの発現が低下する事が予想されるが、double TGマウスとcontorolマウスを高齢と若年マウスで比較する事により、加齢によるオートファジーの低下のklothoの発現がどの程度関与しているかを検討する。
臨床的にCKD患者で急性腎障害を併発した患者尿でのKlotho値を含めた早期バイオマーカーを検索すると共に、尿沈渣内の尿細管細胞を単離し、新規の技術であるsingle cellからのReal-time PCR法により再生・オートファジーのマーカーとしてのLC-3の遺伝子発現を定量的に検出する方法を検討する。また急性腎障害の腎生検検体でオートファジー/マイトファジー検出も試みる。

次年度使用額が生じた理由

H29年1月から産前産後休業・育児休業を取得したことから、その準備段階より当該研究の進行は一旦中断している。よって、当初の研究実施計画より実施進行は遅れており、またH28年度の予算については未使用分が生じている。今後H29年10月で休業終了予定であり、以降に当該研究を再開予定である。再開後の実施計画は当初予定を一部変更しつつ進行予定であり、H28年度の未使用分の予算も使用する予定である。

次年度使用額の使用計画

今後H29年10月で休業終了予定であり、以降に当該研究を当初予定を一部変更しつつ進行予定である。
今後はGFP-LC3-TGマウスを使用し、GFP-LC3-TGマウス由来の培養尿細管細胞を用いて、Klotho遺伝子の強制発現およびsiRNAによる遺伝子発現抑制系による、オートファジー/マイトファジーの変化とオートファジー関連遺伝子の変化を確認してゆく。Double TGマウスとcontorolマウスを高齢と若年マウスで比較する事により、加齢によるオートファジーの低下のklothoの発現がどの程度関与しているかを検討する。臨床的にCKD患者で急性腎障害を併発した患者尿でのKlotho値を含めた早期バイオマーカーを検索する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Polyarteritis nodosa confined to the breasts associated with polyenthesitis.2016

    • 著者名/発表者名
      Shimamura Y,Taniguchi Y,Hamada-Ode K,Inoue K,Fujimoto S,Terada Y
    • 雑誌名

      Mod Rheumatol

      巻: 26 ページ: 159-60

    • DOI

      10.3109/14397595.2015.1031720

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Granulomatous periostitis and tracheal involvement in sarcoidosis2016

    • 著者名/発表者名
      Shimamura Y,Taniguchi Y,Yoshimatsu R,Kawase S,Yamagami T,Terada Y
    • 雑誌名

      Rheumatology (Oxford)

      巻: 55 ページ: 102

    • DOI

      10.1093/rheumatology/kev319

    • 査読あり
  • [学会発表] 腎生検を施行したファブリー病腎障害の1例2016

    • 著者名/発表者名
      島村芳子・松本竜季・大出佳寿・井上紘輔・堀野太郎・寺田典生
    • 学会等名
      第46回日本腎臓学会西部学術集会
    • 発表場所
      シーガイヤコンベンションセンター 宮崎県 宮崎市
    • 年月日
      2016-10-14 – 2016-10-15
  • [学会発表] 慢性腎臓病において血清遊離型αKlothoと心疾患予後予測因子NTpro-BNPは相関を認める2016

    • 著者名/発表者名
      島村芳子,刑部有紀,西川浩文,前田夏希,松本竜季,大出佳寿,緒方巧二,井上紘輔,谷口義典,堀野太郎,池辺弥夏,寺田典生
    • 学会等名
      第59回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 神奈川県 横浜市
    • 年月日
      2016-06-17 – 2016-06-19
  • [学会発表] IL36受容体欠損マウスでは虚血再灌流による急性腎障害の予後が改善する2016

    • 著者名/発表者名
      有馬直樹,西川浩文,松本竜季,大出佳寿,島村芳子,緒方巧二,井上紘輔,谷口義典,堀野太郎,佐野栄紀,寺田典生
    • 学会等名
      第59回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 神奈川県 横浜市
    • 年月日
      2016-06-17 – 2016-06-19
  • [学会発表] Thioredoxin-interacting protein(TXNIP)欠損マウスではミトコンドリア機能異常が起こり急性腎障害の予後は悪化する2016

    • 著者名/発表者名
      高橋 洸,刑部有紀,松本竜季,大出佳寿,島村芳子,緒方巧二,井上紘輔,谷口義典,堀野太郎,藤本新平,寺田典生
    • 学会等名
      第59回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 神奈川県 横浜市
    • 年月日
      2016-06-17 – 2016-06-19
  • [学会発表] phosphatase 1 nuclear-targeting subunit は加齢と急性腎障害で発現が低下し細胞周期を調整しアポトーシスを軽減する2016

    • 著者名/発表者名
      山口宗祥,竹村尭拡,松本竜季,大出佳寿,島村芳子,緒方巧二,井上紘輔,谷口義典,堀野太郎,藤本新平,寺田典生
    • 学会等名
      第59回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 神奈川県 横浜市
    • 年月日
      2016-06-17 – 2016-06-19
  • [学会発表] HSPB-1は急性腎障害において誘導され近位尿細管細胞のAutophagyとApoptoisを調整する2016

    • 著者名/発表者名
      松本竜季,大出佳寿,島村芳子,緒方巧二,井上紘輔,谷口義典,堀野太郎,寺田典生
    • 学会等名
      第59回日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 神奈川県 横浜市
    • 年月日
      2016-06-17 – 2016-06-19
  • [学会発表] 多発付着部炎を合併した乳房限局結節性多発動脈炎の一例2016

    • 著者名/発表者名
      島村芳子、谷口義典、松本竜季、大出佳寿、緒方巧二、中山修一、井上紘輔、次田誠、堀野太郎、寺田典生
    • 学会等名
      第60回日本リウマチ学会総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 神奈川県 横浜市
    • 年月日
      2016-04-21 – 2016-04-23
  • [学会発表] 中枢神経領域の腫瘍性病変で発症したIgG4関連疾患と考えられた一例2016

    • 著者名/発表者名
      島村芳子,谷口義典,刑部有紀,西川浩文,前田夏希,松本竜季,大出佳寿,緒方巧二,中山修一,井上紘輔,次田 誠,堀野太郎,寺田典生
    • 学会等名
      第60回日本リウマチ学会総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 神奈川県 横浜市
    • 年月日
      2016-04-21 – 2016-04-21

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公開日: 2018-01-16  

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