1992年~2012年の期間で長崎大学でIgA腎症と診断された症例約700例を対象とした。まず蛍光抗体法でκ鎖が優位に染色される症例、λ鎖が優位に染色される症例、同等に染色される症例の3群間で、臨床的な特徴について検討した。κ鎖が優位な症例は全体の3%程度に過ぎず、κ鎖とλ鎖が同等の症例:λ鎖が優位な症例=1:2程度であった。κ鎖が優位な症例では血清Crが高値であり、電子顕微鏡所見でhump様の上皮下のdepositを認める症例が含まれていた。これらの症例でのコホート研究を計画していたが、関連病院での情報収集が困難であったため腎生検時の横断研究にまず取り組むこととした。 κ鎖が優位な複数の症例で上皮下にhump様の構造物を認めたことから、IgA腎症と診断された症例の中にIgA陽性の感染関連腎炎が含まれているのではないかと仮説を立てて、軽鎖の沈着パターンも含めて横断研究を行うこととした。 IgA腎症と診断された症例で、電顕写真があり、軽鎖のκ鎖とλ鎖が染色されていた症例464例を対象とした。上皮下にdepositを認める症例は51例で、上皮下にdepositを認めない症例に比較して、有意な低補体血症(C3低値)、管内細胞増多、λ鎖非優位が認められた。さらにhump様の構造物が認められた症例は51例中9例であった。 腎生検時の病歴を再確認して感染を疑わせるようなエピソードの有無について検討を行ったが、9例中3例しか確認できなかった。感染のエピソードが明らかでない症例においても、感染関連腎炎に似た所見を有する将来については、改めて病歴を確認する必要があると考えられた。 なお軽鎖の分類に基づいたIgA腎症のコホート研究については、関連病院の協力を得ながら今後も継続していく。
|