研究課題/領域番号 |
16K19493
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
泉 裕一郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (20736243)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 代謝性アシドーシス / レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 / ユビキチン-プロテアソーム系 / アンモニアトランスポーター |
研究実績の概要 |
In vivoにおいて、アシドーシスとアルドステロン刺激による尿細管細胞の(ユビキチン-プロテアソーム系)UPS活性とアンモニアトランスポーターRhcgの発現の変化について検討した。 マウス対照群、NH4Cl 飲水負荷群(アシドーシス群)、NH4Cl 飲水負荷+エプレ レノン(選択的アルドステロン拮抗薬)投与群を作成し、酸排泄能を検討した。酸負荷により尿中アンモニア排泄量の増加を介した酸排泄の増加は認めたが、エプレレノンによる酸排泄阻害効果は明らかではなかった。またreal time PCR法により5つのUPS関連遺伝子の発現を検討したが、酸負荷、酸負荷+エプレレノンによる発現の変化は認めなかった。 そこでアルドステロン単独の効果を検討するため、オスモティックポンプを用いてマウスにアルドステロンを持続投与し、Rhcgの発現への影響を検討した。アルドステロン投与により尿中アンモニア排泄の増加による酸排泄の増加を確認した。腎臓より抽出した膜分画においてRhcg蛋白の発現の増加をWestern blottingにより確認した。蛍光免疫染色によっても、アルドステロン刺激により特に皮髄境界部の集合尿細管においてRhcgの細胞膜上へ局在化することを確認した。また副腎摘出により、腎組織におけるRhcg mRNAの減少をreal time PCR法によって確認した。 In vitro実験としては、Flag標識マウスRhcgをIN-IC細胞に過剰発現させたのち、抗Flag抗体を用いて免疫沈降を行ったところ、ユビキチン蛋白の共免疫沈降を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画に沿って、in vivo実験を行ったが、エプレレノンによる酸排泄阻害効果が明らかでなく、またUPS関連遺伝子のmRNAレベルでの発現変動が認められなかったため、計画を変更して再度実験を行う必要が生じた。また熊本震災により、約3か月はほとんど実験が不能となり、その後も数か月に渡り限られた手法の実験を行うことを余儀なくされたことも、大きく影響した。
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今後の研究の推進方策 |
実験計画の変更の一環として、代謝性アシドーシスで血中濃度が上昇し、エプレレノンによりその効果が阻害される、アルドステロンの単独投与をオスモティックポンプを用いて行ったところ、尿中酸排泄が増加した。その効果の少なくとも一部は、アルドステロンがRhcgの発現を刺激し、尿中アンモニア排泄を増加させることによることが強く示唆された。今後同実験を用いた詳細な検討そ進める。またUPSの関与を明らかにするために、NH4Clの投与期間を変えて、代謝性アシドーシスが腎臓尿細管のUPS活性に及ぼす影響について、検討を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
20016年4月の熊本震災により、申請者が所属する教室が入る建物は構造体の損壊による倒壊の恐れが生じ、教室と研究室の退去を余儀なくされた。その後仮の実験室をセットアップし、3か月ほどで実験の再会はしたものの、可能なものはごく限定された手法の実験であった。2017年1月新研究棟へ移動し、現在研究室のセットアップをおおむね終えたところである。以上の経緯にて実験目的の助成金使用について遅延が生じる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
新たな研究室のセットアップを終え次第、遅延を取り戻すべく予定の実験を進めていく。
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