研究課題/領域番号 |
16K19494
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
谷川 俊祐 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (10726318)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腎臓 / ネフロン前駆細胞 / iPS / ネフロン / 尿細管 / 糸球体 |
研究実績の概要 |
人体の主要臓器である腎臓は再生しないが発生期には腎臓を造り上げる前駆細胞集団が確かに存在している。しかし、それらはネフロン(糸球体や尿細管からなる機能単位)を構成する細胞へと分化し生後には消失する。このことが腎臓が再生できない理由の一つと考えられる。申請者は最近、これまで不可能であったマウスのネフロン前駆細胞を未分化の状態を維持させたまま増幅する培養法を確立した。さらにこの培養系をマウスES細胞から誘導したネフロン前駆細胞に応用し、糸球体と尿細管の3次元構造を形成する多能性を維持した状態でネフロン前駆細胞を増幅することに成功した。本研究は、この知見をヒトiPS由来のネフロン前駆細胞の増幅培養法の確立に応用し、分化能を維持した自己複製法を確立することで腎臓再生医療の基盤構築を目指す。昨年度に続き、ヒトiPS由来ネフロン前駆細胞の分化能を維持する培養法の確立に向け、ネフロン前駆細胞の純化法、最適培養条件の検索、凍結法の検討を実施した。これまでにマウスのネフロン前駆細胞の維持培養条件を基準に検討を進めたが、直ちには適用できなかった。そこで、本計画で発案していたネフロン前駆細胞のマーカーである転写因子SIX2陽性の細胞がGFPを発現するiPS細胞を研究協力者である西中村教授から提供頂き、GFPが発現する条件を検索し培養法の改善に適用した。その結果、SIX2-GFP を高発現し、ネフロンへの分化能を維持したまま増幅する候補因子を数個見つけることができた。それにより、凍結培養法の開発に取り組むことができ、次年度には長期培養や未分化維持機構の解析の検討を実施できる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に開発した、ヒトiPS細胞からネフロン前駆細胞に誘導した組織から細胞表面抗原の抗体を使ってネフロン前駆細胞を純化する方法と上記のSIX2-GFPノックインiPS細胞を組み合わせることでネフロン形成能を有する細胞分画を高純度で単離することができるようになった。この細胞をFACSで単離し分化能を維持する培養条件もGFPと細胞表面マーカーを指標にすることでほぼ決定することができた。この細胞の凍結法開発も順調に進んでおり、融解後の細胞がネフロン形成能を維持することが現時点で確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の培養条件で長期にiPS由来ヒトネフロン前駆細胞を培養できるか検討する。長期培養後の網羅的遺伝子発現変動もRNA-seqにより解析しており、今後の培養法の改善に活用する。培養条件を確定した後は、培養に含まれる因子の機能やメカニズムを解析し、最終的にはネフロン前駆細胞の維持及び増幅機構を明らかにすることを目指す。
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