研究課題
最近申請者は腎糸球体ポドサイトにおける転写因子KLF4を介したエピゲノム調節について報告し、レニンアンジオテンシン阻害薬の持続的蛋白尿抑制効果との関連性について報告した(JCI2014, KI 2015)が、本研究においては、このようなエピゲノム変化形成の原因の一つとしてDNA損傷修復機構の関与の可能性があることを見出し、KLF4-interacting proteinと既報のあるKAT5に注目して検討を進めた。ポドサイト特異的KAT5ノックアウト(KO)マウスは非常に強い表現型を呈し、腎不全により6週齢前後で死亡したことから、発生段階での影響を除外するため、タモキシフェン誘導型ポドサイト特異的KOマウスを作成したところ、同様に著明なアルブミン尿、巣状分節性糸球体硬化病変を認め、ポドサイトにおけるKAT5を介したDNA修復の重要性が示唆された。また病態における関与について検討したところ、糖尿病性腎症ポドサイトではKAT5発現が低下しており、更にヒト培養ポドサイトにおいてはKAT5過剰発現により、スリット膜分子として重要なネフリン発現の増加、プロモーター領域のメチル化低下、同領域での二本鎖DNA損傷マーカーであるγH2AX低下が認められ、DNAメチル化とDNA修復が関連していることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
誘導型ポドサイト特異的ノックアウトマウスを追加して作成・検討することができ、KAT5を介したDNA修復機構とエピゲノム変化形成の関連について、より詳しく検討が進められていると考える。
高血糖によるDNA修復因子KAT5の低下という、DNA修復環境の変化がもたらすエピゲノム変化形成プロセスについて、より詳細な分子機序の検討を進めたいと考えている。具体的には、まず高血糖によりKAT5発現が低下する分子機序について培養細胞を用いた検討を進める。また、KAT5は主に二本鎖DNA切断(DSB)の修復に関与するが、ポドサイトにおいて人為的にDSBを起こした場合にDNAメチル化が惹起されるのかについて検討を行い、DNA損傷修復とDNAメチル化変化の関連について、より具体的な検討を行いたいと考えている。
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