研究課題
本年度は、父親の過栄養が仔の腎障害に関与することを証明しそのメカニズムを解明するためのラットモデル作成を主として行った。12週令のSDラット雄にコントロール飼料を投与する群(NF群)、高フルクトース及び高脂肪飼料を投与する群(HFF群)に分け、6週間同じ飼料を継続した。高フルクトース及び高脂肪飼料を投与した群で高体重・高血糖となったが、腎機能に変化を認めないことを確認した。その後、コントロール食ラット雌と交配した。出産後はすべてコントロール食とし、母ラットあたりの仔の個体数や性別に差がないようにわけ管理した。結果:出産後は継時的(出生後、4週令、8週令、12週令、16週令)にsacrificeし検体を収集した。十分な個体数が一度には得られず、NF群・HFF群ともに追加で交配した。現時点では個体数が少なく統計学的有意差は得られていないが、HFF群で食欲増進を認め体重増加傾向および8週齢頃よりアルブミン尿増加傾向しており、16週令で耐糖能異常および血圧上昇傾向を認めた。父親に対する高フルクトース及び高脂肪飼料負荷が仔の将来の耐糖能異常・腎障害を惹起する可能性があるが、個体数をさらに増やした後に、体重・血圧・耐糖能異常、蛋白尿の統計学的解析に加え、生化学検査にて腎機能・糖代謝・脂質代謝・アディポネクチンを測定し評価する予定である。また、可能であれば網羅的にエピジェネティクス解析を行う予定である。結論:父親の過栄養が仔の腎障害を惹起する可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
父親に対する高フルクトース及び高脂肪飼料負荷が仔の将来の耐糖能異常・腎障害を惹起する可能性があり、検体数が不十分ではあるが仮設通りの結果が得られている。今後は十分な検体数が得られた後に各種検査・病理学的検討を行い、統計学的に評価していく予定である。
引き続き母ラットから生まれた仔を継時的に評価していくとともに、病理学的にも腎障害を呈することを確認しメカニズム解明のためアディポネクチンを測定予定である。さらに、父親の過栄養が仔の腎障害を呈する機序としてアディポネクチンの関与が考えられれば、遺伝子改変マウスを用いた検討あるいはアディポネクチンを外的に補充し腎障害への影響を検討する予定である。同時に父ラット・仔ラットの腎臓や精子において腎障害マーカーのエピジェネティクス解析を網羅的に行い、エピジェネティクス変化が仔の腎障害に与える影響を観察予定である。
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Clinical and Experimental Nephrology
巻: 20 ページ: 853-861
10.1007/s10157-016-1265-9