研究課題/領域番号 |
16K19503
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
三木 康生 弘前大学, 医学研究科, 助教 (30709142)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | AMBRA1 / オートファジー / 多系統萎縮症 / シヌクレイノパチー / αシヌクレイン |
研究実績の概要 |
オートファジーは細胞内分解機構の一つである。ULK1、ULK2、VPS34、AMBRA1はオートファゴソームの形成を開始する主要タンパク質である。我々は、レヴィ小体病の病態において、オートファジー上流分子に異常が生じていることを報告してきた。今回、AMBRA1を含むオートファジー上流分子が多系統萎縮症(MSA)の病態に関わるかを検討した。 剖検脳組織を用いた免疫染色では、正常対照において神経細胞の胞体がULK1、ULK2、VPS34で淡く陽性であった。AMBRA1では神経細胞に加え、オリゴデンドログリアの胞体も淡く陽性。一方、MSAでは、AMBRA1でグリア細胞質内封入体、神経細胞質内封入体が強陽性。凍結脳のウエスタンブロット解析(WB)では、MSAでULK1、ULK2、AMBRA1が有意に増加していた。HEK293細胞を用いた免疫沈降法では、AMBRA1 F3(C末側)と正常型αシヌクレインが結合した。表面プラズモン共鳴法では、変異型αシヌクレインは正常型に比して9倍強くAMBRA1と結合した。凍結脳組織を用いた免疫沈降法でも、AMBRA1と正常型αシヌクレインが結合し、リン酸化αシヌクレインとはスメアを形成した。一方、HEK293細胞を用いたWBでは、AMBRA1過剰発現群において、弱いながらも有意に変異型αシヌクレイン量が減少した。マウス初代培養神経細胞を用いた蛍光免疫染色では、AMBRA1機能抑制群において、神経細胞の胞体内に正常型αシヌクレイン陽性構造物が有意に増加した。 MSAにおいてもオートファジー上流に何らかの異常が生じていることが示唆された。さらに、AMBRA1は正常型ならびに異常αシヌクレインと結合し、αシヌクレインの分解にも関わる事が示唆された。AMBRA1はレヴィ小体にも発現しており、シヌクレイノパチーの治療における標的分子となる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
AMBRA1とαシヌクレインの結合を証明するために時間を要すると当初考えられたが、様々なアッセイにより比較的短時間で証明することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
MSA、レヴィ小体病の病態において、1)オートファジー上流分子の異常が生じていること、2)AMBRA1はαシヌクレインの分解に関わる標的分子となり得ることが明らかとなった。平成29年度は、MSA-TGマウスにおけるAMBRA1の活性化がαシヌクレインの蓄積に与える影響を予定どおり進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に購入した消耗品費が予定よりも安く購入出来たため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の予算と合わせて消耗品の購入にあてる。
|