オートファジーは細胞内分解機能のひとつである。ULK1、ULK2、VPS34、AMBRA1はオートファゴソームの形成に関わる主要タンパク質である。そこで、レヴィ小体病の病態において、オートファジー上流分子がシヌクレイノパチーの一つである多系統萎縮症(MSA)の病態に関わるか否かについて検討した。 剖検脳組織を用いた免疫組織化学的検討では、正常対照において神経細胞の胞体がULK1、ULK2、VPS34、AMBRA1弱陽性。AMBRA1では、神経細胞に加え、オリゴデンドログリアの胞体も弱陽性。一方、MSAでは、グリア細胞質内封入体ならびに神経細胞質内封入体がAMBRA1強陽性。凍結脳組織を用いたウエスタンブロット解析(WB)では、ULK1、ULK2、AMBRA1が有意に増加。HEK293細胞を用いた免疫沈降法では、AMBRA1のC末側が正常型αシヌクレインと結合。表面プラズモン共鳴法では、変異型αシヌクレインは正常型に比して9倍強くAMBRA1と結合した。凍結脳組織を用いた免疫沈降法でも、AMBRA1と正常型αシヌクレインが結合し、リン酸化αシヌクレインとスメアを形成。一方、HEK293細胞を用いたWBでは、AMBRA1過剰発現群において、弱いながらも有意に変異型αシヌクレイン量が減少した。マウス初代培養神経細胞を用いた蛍光免疫染色法では、AMBRA1機能抑制群において、正常型αシヌクレイン陽性構造物が有意に増加した。 MSAにおいてオートファジー上流に何らかの異常が生じていることが示唆され、AMBRA1はαシヌクレインの分解にも関わることが示唆された。さらに、シヌクレイノパチー患者の末梢血単核球を用いた検討では、オートファジーの異常は病早期より生じていることを見出し、AMBRA1を含むオートファジーの活性化はMSAを含むシヌクレイノパチーの治療法となり得ることが示唆された。
|