研究課題
進行期のパーキンソン病(PD)患者において、視床下核(STN)もしくは淡蒼球内節(GPi)に対する脳深部刺激療法(DBS)は卓越した運動症状改善効果を発揮する。一方で、DBS後に発話機能の悪化がしばしばみられ、患者の生活の質の低下に繋がるとともに、就労・社会生活上の大きな問題となり得る。本研究ではPD患者に対するDBS後の発話障害の病態解明と治療法の開発を目指した。今回の観察研究では、多くの患者がPD固有の発話障害(運動低下性構音障害、吃音、気息性嗄声)を有すること、DBS誘発性の発話障害として頻度が高いのは努力性嗄声と痙性構音障害であること、DBSは吃音や気息性嗄声を悪化させる場合があることを見出した。また、吃音の発生は男性患者に頻度が高く、運動機能や認知機能が不良であること、抗パーキンソン病薬の投与量が多いことが吃音の重症度と関連していた。音響学的解析では、声帯振動の途切れを反映するとされるdegree of voicelessおよび発話時の構音筋群の動きの大きさを反映するとされるvowel space areaの2つがDBSの発話機能に対する影響を客観的に評価する指標として有用性が示唆された。病態の多様性のために、それぞれの病態を反映する複数のパラメータを組み合わせる必要性があると考えられたが、いずれのパラメータを組み合わせるのが最適なのかについては今後のさらなる検討が必要である。今後の展開として、発話障害の客観的評価法の確立および発話障害の病態に応じたテーラーメイドの治療法の開発が求められる。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 図書 (2件)
Journal of Neural Transmission
巻: 124 ページ: 1547-1556
10.1007/s00702-017-1804-x