薬剤スクリーニングで選出された、α-シヌクレイン(α-Syn)の発現を抑制する2種類の化合物(A・B)を基に、15種類の類似構造化合物、60種類の類似作用化合物を選出し、スクリーニングを行った。その結果、特に、一定の芳香環を持つ化合物が、α-Synの発現に影響を及ぼすと考えられ、より効果と安全性の高い薬剤選出への方向性が示された。類似作用化合物に関しては、化合物A・Bと同様の傾向を示すものもあったが、低用量ではα-Synの発現量を増加させるものもあり、至適濃度が重要と考えられた。また、スクリーニングに使用した細胞は神経線維芽細胞株であったが、これは化合物投与によりわずかに分化し、α-Syn量が変化して実験の再現性に影響を及ぼす可能性が考えられた。このため、神経線維芽細胞株を神経細胞に分化させてα-Syn量を一定にし、化合物の薬効を再検証した。 一方で、α-Syn脳内接種モデルマウスに化合物A・Bを投与し、異常α-Synの伝播が抑制されるかどうかの検証も行った。α-Syn脳内接種モデルマウスに関しては、複数の遺伝子改変マウスにα-Syn脳内接種を行い、野生型マウスよりも数倍α-Syn伝播速度の速いモデルマウスの作製に成功した。化合物A・Bは脂溶性薬剤のためジメチルスルホキシドを溶媒に使用する必要があったが、α-Synの発現抑制効果のある濃度まで化合物A・Bを投与するためにジメチルスルホキシド濃度を上げると、マウス生体への毒性が強くなり、目標量の投与は難しかった。今後は、より低用量での投与が可能な薬剤をスクリーニングする予定である。
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