研究課題
漢字・仮名の「読み・書き」の機能の脳内機能領野の解明のため研究を推進した。術前評価に硬膜下電極を慢性留置した難治てんかん外科患者で研究に同意を得た者を対象とした。漢字/かな読み課題に同期した皮質刺激介入を4症例にて行い、定量的な精神物理学的評価から、側頭葉底部前後方向に意味から形態認知への機能勾配を明らかにした(国内・国際学会発表、論文準備中)。低強度刺激下の呼称課題による言語機能マッピング法による言語機能中核領域探索を行い、今後の漢字・かな関連機能探索への応用法を確立した(国内学会発表)。関連する領野間の脳機能結合地図の作成のため、電気的白質線維追跡法(皮質皮質間誘発電位 CCEP)によるネットワークマッピングの症例を蓄積した。機能外科の覚醒下手術症例において、術中の皮質・白質の電気刺激から結合する前頭葉(腹外側領域)・側頭葉(中/下側頭回)の言語機能皮質を同定し、前頭-側頭葉の結合地図を明らかにし、言語関連機能結合地図を作成、漢字・かな関連の機能結合地図の基盤データとした(国際学会発表、論文準備中)てんかん外科の優位半球側頭葉を切除領域に含む症例において、術・前後の経時的神経心理検査と切除病変との対応から漢字・かなの書字・読字機能の機能変容、可塑性の研究を推進した。8例の難治側頭葉てんかん患者において、側頭葉前方領域の切除前・後 1週間、1か月、6か月、1年と経時的な機能評価を行い、正答率およびエラー内容の検討し、側頭葉前方領域の漢字書字・読字機能が同部位の意味記憶に基づくことを明らかにした(国内学会、国際学会発表)。今後、漢字・かな関連課題下のfMRI記録に関して、術前・後の機能変容解明のための課題を準備し記録開始を予定する。読字・書字機能システムマッピングから、漢字・仮名を扱う脳内システムの差異、共通性を明らかにし、ヒトの文字を扱う脳内神経基盤の解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
研究項目A 漢字・仮名の読字・書字関連脳内領野の必須機能部位同定:硬膜下電極留置の患者において、SALA失語症検査をもとに作成した漢字・仮名の読字課題下の高頻度皮質電気刺激介入による言語優位半球側頭葉の底部の前後方向の機能勾配について国内学会および国際学会にて発表を行った。また言語の中核領域同定のための皮質電気刺激法について国内学会発表を行った。研究項目B. 関連領野間の機能的結合地図作成:読字・書字関連皮質間の機能的結合の結合地図作成を推進し、症例を蓄積した(4名超)。言語優位側下前頭回と外側側頭葉との機能的結合について国際学会にて発表した。研究項目C. 読字・書字関連機能の回復機構・脳機能可塑性の解明:漢字・かなの書字読字機能について、脳機能外科術後に経時的(1週間、1か月、6か月、1年)に評価を行い、回復の変容・脳機能可塑性について、研究を推進した。切除皮質と神経心理検査の対応について、側頭葉(言語優位半球、非優位半球両方含む)を切除した10 名を超える症例での神経心理検査を経時的に評価した。てんかん外科症例の前部側頭葉切除前後における漢字・かな関連の脳機能含む意味記憶の機能代償機構について論文準備中である。研究計画の上記3研究項目それぞれで、研究実績に具体的に示したように、研究計画にそって、症例蓄積およびデータ解析、学会発表を順次行っている。
電気生理学的手法を中心に神経機能画像、神経心理学的手法を組み合わせ日本人特有の漢字・仮名の脳内処理機構の共通性・差異を、読字・書字機能システムの探索から解明する。研究項目A. 漢字・仮名の読字・書字関連脳内領野の必須機能部位同定:硬膜下電極留置の患者において、漢字・仮名の読字・書字関連の課題を(SALA 失語症検査)を元に作成・施行し、①事象関連皮質電位を計測、誘発反応(高周波律動も含む)を認める電極から候補となる中核領域を同定、②高頻度皮質電気刺激による詳細な機能評価(=必須部位同定)を行う。高頻度皮質電気刺激介入では課題遂行の状態を計測し、精神物理的評価(正答率・反応時間・エラーの内容)による定量的解析を行う。事象関連誘発電位のデータは、加算波形解析、認知関連の高周波γ活動解析に加え、デコーディング手法を用いて脳活動と相関する漢字・仮名の書字・読字機能構成要素を推定する。研究項目B. 関連領野間の機能的結合地図作成:上記A.で同定される皮質への刺激による皮質皮質間誘発電位(CCEP)の計測の症例数を蓄積し、読字・書字関連皮質間の機能的結合を方向性を含めて明らかにし、電極留置範囲全体の読字・書字関連の機能野結合地図を作成する。研究項目C. 読字・書字関連機能の回復機構・脳機能可塑性の解明:脳機能外科手術による漢字・かな関連の症状を有する症例を蓄積する。術前・後において、神経心理課題、fMRI を行い、切除皮質の脳機能を推定する。術後経時的(1週間、1か月、6か月、1年)に評価を行い、機能回復の変容・脳機能可塑性を明らかにする。研究項目A、B、C で得られた結果を、電極位置情報、切除部位解剖情報を標準脳(MNI)上の解剖学的座標に非線形にcorregistrationし、集約し、これまでの脳損傷研究、機能画像研究との比較を行う。得られた結果を取りまとめ学会発表を行っていく。
経時的に施行予定のfMRI検査に関しては、研究に使用するMRI機器の入れ替えや課題作成中のため対象症例での記録が次年度予定となり、その関連の設備備品費・消耗品の購入が必要なため。
漢字・かな読字書字関連の課題下のfMRI記録を行うにあたり、MRI関連(機器使用代、ヘリウム使用代など)の消耗品費を次年度に計画する。fMRI解析、課題下の神経活動(皮質脳波)記録・解析、デコーディング解析の解析用ワークステーションとデータ保存用ハードディスク(設備備品費)購入を予定する。fMRI,神経心理課題については対照となる正常被験者データの取得を行う(人件費・謝金)。得られた研究成果を国内外の学会で発表し(研究成果発表:外国旅費、国内旅費)、学術論文にまとめる(論文投稿費)。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 3件) 図書 (3件) 備考 (2件)
臨床神経
巻: 57 ページ: 37-40
10.5692/clinicalneurol.cn-000936
Neurol Clin Neurosci
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doi:10.1111/ncn3.12055
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~neurology/laboratory/lab_3_5.htm
http://epilepsy.med.kyoto-u.ac.jp/results