研究課題
漢字・仮名の「読み・書き」の機能の脳内機能領野の解明のため研究を推進した。術前評価に硬膜下電極を慢性留置した難治てんかん外科患者で研究に同意を得た者を対象とした。漢字/かな読み課題に同期した皮質刺激介入を症例を追加して計5例で検討し、定量的な精神物理学的評価から、側頭葉底部前後方向に意味から形態認知への機能勾配を明らかにした(国内学会発表、論文準備中)。側言語経路のうち側頭葉底部前方領域が、漢字処理に関連する意味処理機能の中核であることを示し討議した(国内学会シンポジウム発表)。関連する領野間の脳機能結合地図の作成のため、電気的白質線維追跡法(皮質皮質間誘発電位 CCEP)によるネットワークマッピングの症例を蓄積した。言語優位半球における縁上回が側頭葉下側頭回との機能結合を認め、頭頂葉における意味処理機能の関与を明らかにし発表した(世界神経学会、臨床神経生理学会)。てんかん外科の優位半球側頭葉を切除領域に含む症例において、術・前後の経時的神経心理検査と切除病変との対応から漢字・かなの書字・読字機能の機能変容、可塑性の研究を推進した。11例の難治側頭葉てんかん患者において、側頭葉前方領域の切除前・後 1週間、1か月、6か月、1年と経時的な機能評価を行い、正答率およびエラー内容の検討し、側頭葉前方領域の漢字書字・読字機能が同部位の意味記憶に基づくことを明らかにした(国内学会発表、論文準備中)。今後、漢字・かな関連課題下の機能的MRI記録に関して、術前・後の安静時MRIおよび切除部位の解剖学的部位を詳細に解析し機能変容解明を目指す。読字・書字機能システムマッピングから、漢字・仮名を扱う脳内システムの差異、共通性を明らかにし、ヒトの文字を扱う脳内神経基盤の解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
研究項目A 漢字・仮名の読字・書字関連脳内領野の必須機能部位同定:硬膜下電極留置の患者において、SALA失語症検査をもとに作成した漢字・仮名の読字課題下の高頻度皮質電気刺激介入による言語優位半球側頭葉の底部の前後方向の機能勾配について症例を蓄積し国内学会発表を行った。また特に漢字処理に関連する腹側言語経路の機能について国内シンポジウムにて発表を行った。研究項目B. 関連領野間の機能的結合地図作成:読字・書字関連皮質間の機能的結合の結合地図作成を推進し、症例を蓄積している。言語優位側頭頂葉縁上回と側頭葉下側頭回との機能的結合について国際学会、国内学会にて発表した。研究項目C. 読字・書字関連機能の回復機構・脳機能可塑性の解明:漢字・かなの書字読字機能について、脳機能外科術後に経時的(1週間、1か月、6か月、1年)に評価を行い、回復の変容・脳機能可塑性について、研究を推進した。切除皮質と神経心理検査の対応について、側頭葉(言語優位半球、非優位半球両方含む)を切除した10 名を超える症例での神経心理検査を経時的に評価した。てんかん外科症例の前部側頭葉切除前後における漢字・かな関連の脳機能含む意味記憶の機能代償機構について論文準備中である。研究計画の上記3研究項目それぞれで、研究実績に具体的に示したように、研究計画にそって、症例蓄積およびデータ解析、学会発表を順次行っている。
電気生理学的手法を中心に神経機能画像、神経心理学的手法を組み合わせ日本人特有の漢字・仮名の脳内処理機構の共通性・差異を、読字・書字機能システムの探索から解明する。研究項目A. 漢字・仮名の読字・書字関連脳内領野の必須機能部位同定:硬膜下電極留置の患者において、漢字・仮名の読字・書字関連の課題にて、①事象関連皮質電位を計測、誘発反応(高周波律動も含む)を認める電極から候補となる中核領域を同定、②高頻度皮質電気刺激による詳細な機能評価(=必須部位同定)を行う。高頻度皮質電気刺激介入では課題遂行の状態を計測し、精神物理的評価(正答率・反応時間・エラーの内容)による定量的解析を行う。事象関連誘発電位のデータは、加算波形解析、認知関連の高周波γ活動解析に加え、表象類似性分析(RSA)などのデコーディング手法を用いて脳活動と相関する漢字・仮名の書字・読字機能構成要素を推定する。研究項目B. 関連領野間の機能的結合地図作成:上記A.で同定される皮質への刺激による皮質皮質間誘発電位(CCEP)の計測の症例数を蓄積し、読字・書字関連皮質間の機能的結合を方向性を含めて明らかにし、電極留置範囲全体の読字・書字関連の機能野結合地図を作成する。研究項目C. 読字・書字関連機能の回復機構・脳機能可塑性の解明:脳機能外科手術による漢字・かな関連の症状を有する症例を蓄積する。術前・術後において、神経心理課題、機能的MRI (安静時機能的MRI含む)を行い、切除皮質の脳機能を推定する。術後経時的に評価を行い、機能回復の変容・脳機能可塑性を明らかにする。研究項目A、B、C で得られた結果を、電極位置情報、切除部位解剖情報を標準脳(MNI)上の解剖学的座標に非線形にcorregistrationし、集約し、これまでの脳損傷研究、機能画像研究との比較を行う。得られた結果を取りまとめ学会発表、論文にまとめていく。
(理由) 経時的に施行予定のfMRI検査に関して、研究に使用するMRI機器の入れ替えにより使用が遅れており次年度に関連消耗品費を使用するため(使用計画)漢字・かな読字書字関連のfMRI記録(安静時MRIを含む)を行うにあたり、MRI関連(機器使用代、ヘリウム使用代など)の消耗品費を次年度に計画する。機能的および解剖MRI、課題下の神経活動(皮質脳波)記録データ、神経心理検査データの保存用ハードディスク(設備備品費)購入を予定する。得られた研究成果を国内外の学会で発表し(研究成果発表:外国旅費、国内旅費)、学術論文にまとめる(論文投稿費)。
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神経心理学
巻: in press ページ: in press
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