研究課題/領域番号 |
16K19512
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
早川 英規 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (70468594)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | alpha-synuclein |
研究実績の概要 |
多系統委縮症(MSA)はわが国の脊髄小脳変性症で最も多く厚生労働省の特定疾患に指定されている難病の一つである。病理学的にはパーキンソン病の原因因子の一つと考えられるα-synuclein(α-syn)がグリア細胞であるオリゴデンドロサイトに蓄積しGCI形成することを特徴とする。 近年、MSA患者脳から抽出したα-synタンパクをα-syn Tgマウス脳内に投与し、α-synタンパクのpropagationを示した。またPD患者から抽出したα-synタンパクではpropagationを認めないことからMSAとPDにおけるα-syn strainsの違いが注目を集めている。 MSAにおけるGCI形成はその病態理解に極めて重要な知見であるが、その分子基盤は明らかでない。我々は通常、神経細胞主体に発現すると考えられるα-synが、MSAにおいて神経細胞からオリゴデンドロサイトに輸送され凝集体を形成するとの仮説の実証を試みた。 家族性PDにおいても、いくつかの変異α-synにおいて特異的にGCIが認められる。G51D変異もGCIを認める家族性PDであり、この変異を有する患者は、より早期に発症し、錐体路兆候、精神症状および自律神経障害のような重度の臨床的特徴を示す。G51D α-synタンパクをフィブリル化し、マウス黒質に接種することで、G51D α-synフィブリル接種マウスよりも有意にリン酸化α-syn陽性封入体の凝集体を広範囲に、より多く認め、さらに黒質ドパミン神経細胞の変性とそれに伴う運動機能障害を示す、よりヒトの病態に類似したモデルを作成した。またこのマウスでは、少数ではあるがオリゴデンドロサイト内でのα-syn凝集体を認めること、新規PDモデルマウスを作成したことを現在論文にして報告準備中である(Hayakawa H,et al.submitted.2018)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス黒質へのG51D α-synフィブリル投与により、野生型α-synフィブリル投与マウスよりも、より多く、より広範囲にリン酸化α-syn凝集体を形成する新規PDモデルマウスを作成した。
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今後の研究の推進方策 |
α-syn変異を用いたオリゴデンドロサイトへの取り込み、凝集体形成、細胞死の過程を解析しMSAの病態解明を目指す。In vitroでのα-synのオリゴデンドロサイトへの取り込みを培養細胞系、オリゴデンドロサイト初代培養系に対してαsyn変異型を用いて取り込み機序を生化学的に比較解析し、αsyn取り込みに関わる修飾因子を同定。取り込み後のGCI形成能、細胞機能の変化などの解析。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在論文投稿中であり、その追加実験と学会発表のため次年度に研究費の繰越しを行った
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