研究実績の概要 |
自己免疫性中枢・末梢神経疾患では、様々な液性因子、自己反応性リンパ球により中枢・末梢神経のバリア機能が破壊され、中枢・末梢神経内に炎症が惹起される。しかし、こうした疾患では、十分なIn vitro の実験系が確立されておらず、バリア機能の破壊機序や炎症細胞浸潤の具体的機序について不明な点が多く、新規治療法の開発には至っていなかった。 本研究では、Blood-Brain Barrier(BBB),Blood-Nerve Barrier(BNB)に特異的な基底膜であるラミニン組成を明らかにし、ヒト由来のBBB、BNB構成細胞株(内皮細胞株、ペリサイト、アストロサイト)を用いて流速負荷型In Vitro系BBB,BNBモデルの構築を行い、それらのモデルを用いて代表的な難治性自己免疫性神経疾患である視神経脊髄炎の患者血清・白血球が炎症細胞浸潤やバリア機能に与える影響を検証し、疾患特異的な炎症細胞浸潤とバリア機能破壊の分子機構の解明を目的とした。 我々は,BNBでの主要な基底膜構成蛋白であるラミニン組成がBBBと異なる独自のラミニン組成(α5β1γ1:511)であることを明らかにし、ラミニン511がBNBのバリア調節因子となりうることを示した。また、我々が樹立した温度条件不死化ヒトBBB・BNB構成細胞株を使用し、Nunc UpCell technologyによる同一インサート上でのマルチ培養法を確立し、国内外で特許申請を行った。さらに 流速負荷型in Vitro系BBBモデルを使用し、視神経脊髄炎の患者血清がアストロサイトから種々のサイトカインの発現を促進させ、それらのサイトカインが内皮細胞からのケモカイン産生を誘導し、リンパ球がBBBを浸潤する病態を明らかにした。
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