研究課題/領域番号 |
16K19515
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
向野 晃弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特任助教 (50754173)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 自己免疫性自律神経節障害 / 抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体 / ルシフェラーゼ免疫沈降法 |
研究実績の概要 |
当院における自律神経節アセチルコリン受容体(gAChR)α3とβ4サブユニットに対する抗体測定系をLIPS(ルシフェラーゼ免疫沈降法)で樹立した。LIPSの概要は以下の通りである。ヒトgAChRα3/β4の C末端にカイアシルシフェラーゼ(GL)が融合したリポーター(gAChRα3/β4-GL)を作成する.gAChRα3/β4-GL発現ベクターをヒト胎児腎臓由来株細胞HEK293に遺伝子導入し,gAChRα3/β4-GLを強制発現させる.gAChRα3/β4-GL発現細胞を可溶化した後にカラム操作にてgAChRα3/β4-GLを精製する.精製したgAChRα3/β4-GL,ヒト血清,そしてプロテインGセファロースの三者を混合し,カイアシルシフェラーゼ免疫沈降を実施する.得られた免疫複合体に含まれるルシフェラーゼ活性をルミノメーターにより測定し,得られた発光量を基に間接的にヒト血清中の抗体量(RLU)を算定する.当院でのLIPS樹立に際しては、自己免疫性自律神経節障害患者血清40例、健常者血清40例、対照患者血清20例を用いてgAChRα3とβ4サブユニットについてそれぞれLIPSを行い、ルミノメーターを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。得られたルシフェラーゼ活性についてROC解析を行い、最適なポジティブコントロール(カットオフ)を設定した。また、ヒト自己免疫性自律神経節障害患者剖検例および疾患対照患者剖検例において自律神経節や脳における免疫染色を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年4月より現在の職場へ着任後、細胞培養の増殖不良、α3/β4-GL発現ベクターのHEK293への遺伝子導入効率の低下およびルシフェラーゼ活性の著しい低下があり、その原因検索に多大な時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
自己免疫性自律神経節障害(Autoimmune autonomic ganglionopathy: AAG)では,抗gAChR抗体がその約半数で陽性となることが判明しているが、半数以上に上る本抗体陰性症例の原因・病態は不明である.我々が測定している抗gAChR抗体以外の病原性物質がseronegative AAG患者血清中には存在するため,これを探索し病態を解析する.今回の研究ではAAGで第二の自己抗体を見出し,その抗体陽性となる症例の臨床像を明らかにする。我々が集積したseronegative AAG症例血清約50サンプルでラット脳凍結切片を用いた免疫組織染色により未知の抗体の存在をスクリーニングする.またヒトneuronal cell line,DAラットの大脳・小脳・脊髄のlysateを用いてのウェスタンブロッティングも試みる.抗体の認識抗原の同定を二次元免疫ブロット法,もしくは免疫沈降法と質量分析法を組み合わせた手法により解析する.その後、新規自己抗体候補として挙げられたものについてLIPSによる測定系を樹立する. LIPSにより新規自己抗体陽性と診断された臨床像の解析を行い、論文報告,学会発表を行う.これまでseronegative AAGと診断されていた症例における血清中新規自己抗体測定を日本全国に呼びかけ,診断基準策定につなげる. 未知の抗体特定,抗体の認識抗原同定に至らない場合には自律神経節に存在する他のニコチン作動性アセチルコリン受容体サブユニットであるα4/β2,α7に対する自己抗体を検出するLIPSの樹立を急ぐ
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新しい抗体測定系の樹立に取り掛かってはいるが、まだ軌道にのっておらず、むしろこれまでの測定結果を用いた後ろ向き研究を重点的に行った。そのために次年度使用額が生じたものと考える。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度では新しい抗体測定系の樹立を予定しており、この研究において使用することを計画している。
|