研究課題/領域番号 |
16K19517
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
東山 雄一 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10722449)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 仮面様顔貌 / 記憶 / 情動 / 表情 / 認知機能 / MRI |
研究実績の概要 |
パーキンソン病(PD)でみられる仮面様顔貌が,認知・情動機能障害や運動症状とどのように関連しているのかを明らかにするため,motion capture技術を応用した表情解析を用いてPDの表情変化を定量化し,各種認知・情動機能検査,運動障害スコアとの比較検討を行った. これまで,PD患者44例および健常被験者24例を対象に,表情解析,および各種認知・情動機能検査,3テスラMRI検査を施行した.解析の結果,表情変動は健常群と比較してPD群で有意に減少していることが明らかとなった.さらに,高度の認知機能障害や明らかなジスキネジアを認めた8例を除外したPD 36例を対象に,算出した表情変動スコアと,各種運動・認知・情動機能検査との関連を検討し結果,UPDRS part IIIで示される運動症状のみならず,性別や記銘力の指標と表情変動との間に有意な相関を認めることが明らかとなった.次に表情変動スコアを従属変数とした,多変量解析を行った結果,表情変動の減少は,記銘力障害と最も強く関連していることが示された. また,PD群を表情変動が良好な群と表情変動が不良な群の2群に分け,健常群を含めた3群間で比較検定を行った結果,表情不良PD群では,男性が多く,運動症状のみならずうつやアパシー傾向が強いこと,さらに記銘力を中心とした認知機能障害を認めることが示された. 以上の結果より,仮面様顔貌は運動症状の悪化のみならず,認知機能低下を示唆する症候であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた被験者数には達していないが,これまで得られたデータ解析の結果からは,比較的仮説通りの結果が得られている.特に多変量解析の結果からは,仮面様顔貌には,運動障害以上に認知機能障害が与える影響が大きいという結果が得られた.このことから,仮面様顔貌は,認知機能障害と関連した新たなバイオマーカーとなることが期待される. 今後,得られた画像データの解析を通して,仮面様顔貌の神経基盤を検討していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後,前年度に撮像した3.0 テスラ MRIデータを用い, voxel-based morphometryによる脳容積変化の解析,Tract-Based Spatial Staticsを用いた拡散テンソル画像解析,安静時 fMRI を用いた脳機能結合解析を行い,仮面様顔貌と関連のある脳領域・神経ネットワークを明らかにしていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
表情解析ソフトのアップデートが行われ,次年度でのアップデート版の購入が必要になった.また次年度より画像解析の詳細を行っていくため,画像解析ワークステーションの構築を予定している.
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次年度使用額の使用計画 |
アップデート版の表情解析ソフトの購入,およびデータの更新. 画像解析ワークステーションの購入および,画像解析・糖型解析ソフトの購入を予定している.
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