研究実績の概要 |
LOTUS-KOとLOTUS-Tgマウスを用いて、多発性硬化症のモデルマウスであるEAEマウスを作製しその表現形を確定するとともに、EAEマウスからT細胞を採取しLOTUSと反応させることで炎症性サイトカインの分泌を促進させることをex vivoで明らかにした。さらに、LOTUSがアンタゴニズムを発揮する受容体であるNogo受容体のKOマウスを用いて同様の実験を行ったところ、LOTUS-KOマウスと同様の結果は得られず、野生型マウスと同様の臨床経過とサイトカイン分泌パターンを呈することが明らかとなった。これらの結果から、我々はLOTUSは神経細胞だけではなく、T細胞にも作用し炎症反応を増悪させる可能性を明らかにしたとともに、その分子メカニズムは既知のNogo受容体を介するシグナル伝達ではなく、未知の受容体を介することが明らかとした。この未知の受容体を同定するため、Streptavidin-Binding Peptide (SBP)タグをつけたリコンビナントタンパクを作製し、活性化リンパ球に発現するタンパクをpull downし、クロスリンカー法を用いて固定し、質量分析を行うことでLOTUSの結合タンパクの同定を試みた。その結果、bait, pull down, negative controlの3つをデータベース検索し、FDR<0.01, score≧50で同定タンパクを抽出したところ、139の候補タンパクが同定された。これらの候補タンパクの解析を行い、LOTUSの未知の結合タンパクを明らかにしつつある。さらに、炎症により髄液中LOTUSが減少する機序をモデルマウスを用いた実験を行い検討した結果、炎症によりmRNA、タンパクの発現が低下することを明らかにした。これらの成果は、軸索関連分子と炎症の関連が明らかとなり、神経系と免疫系の療法に係わる新たな治療につながる成果である。
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