研究課題/領域番号 |
16K19519
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
東 裕美子 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (00453093)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ALS / ショウジョウバエ / FUS / Cabeza / TDP-43 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のショウジョウバエモデルを用いて、1)家族性ALSの原因遺伝子Fused in sarcoma (FUS)あるいはTAR DNA-binding protein43 (TDP-43)に共通して相互作用する遺伝子を同定し、ALSの原因遺伝子および関連分子の相互作用を解明すること、及び2)新規標的治療薬候補を探索し、 臨床応用への展開を目指すことである。
今年度は、 (1)複数のALS原因遺伝子に共通に関わる遺伝子の同定:ALSの原因遺伝子であるFUS及びTDP-43のショウジョウバエホモログCaz及びTBPHをノックダウンしたショウジョウバエモデルを用いて、その表現型を修飾する遺伝子を探索した。遺伝学的相互作用の候補分子の突然変異系統それぞれとALSモデルショウジョウバエをそれぞれ交配し、複眼の形態学的変化、運動能力の低下や神経筋接合部におけるシナプスの携帯げ区的変化などALSモデルショウジョウバエが示す表現型が改善するか検討を行った結果、複数の関連候補遺伝子を同定しつつある。これらについて現在論文にまとめており、今後投稿予定である。 (2)ALS治療薬候補物質の探索:治療薬候補薬剤を、以前我々が報告しているFUS-ALSモデルショウジョウバエに経口投与し、それらが示す表現型が改善するか検討を行っている。現在、ショウジョウバエFUSノックダウンによる複眼の形態学的異常が改善する標的候補薬剤を複数同定しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画であるFUS及びTDP-43のショウジョウバエホモログであるCaz及びTBPHに共通して相互作用する候補遺伝子を複数同定しつつある。また薬剤スクリーニングに関しても予備実験は完了しており、特に技術的な問題点無く、現在複眼の表現型に関して解析を行うことができている。 以上のことから、全体的に当初の研究計画がおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ALSショウジョウバエモデルを用いて、FUS及びTDP-43のノックダウンによる神経変性と、相互作用を認めている候補遺伝子による神経変性の変化、そのメカニズムについてさらに解析を行う。複数のALS原因遺伝子に共通して作用する分子の病態メカニズムを解明することにより、ALS全体の病因・病態解明及び新規標的治療法の開発につながることが期待される。 また薬剤スクリーニングに関しては、ショウジョウバエFUSノックダウンによる複眼の形態学的異常が改善する候補薬剤を複数同定しつつあり、今後神経系における成虫のclimbing assayや幼虫のcrawling assay, 神経筋接合部におけるシナプスの形態学的変化などの表現型について解析予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、樹立したCazノックダウンモデル及びTBPHノックダウンモデルショウジョウバエの解析をしていたため新たな系統作成や購入系統が少なかったことと、免疫組織化学的染色やWestern blottingで使用した抗Cabeza抗体、抗TBPH抗体、抗FLAG抗体などの各種抗体購入費が予定の研究費使用額を下回り、予定の研究費使用に至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
ショウジョウバエノックダウンや変異系統の購入費用、各種抗体試薬・器具類の購入費用、新規候補薬同定のため薬剤スクリーニングに使用する候補化合物費用に充てる。 本年9月に京都で開催されるWorld Congress of Neurologyや12月に横浜で開催される日本分子生物学会年会の参加旅費にも使用する。また論文英文校正費、投稿費にも支出する予定である。
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