研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis, ALS)の画像診断は、病初期においては特徴的な神経学的徴候を欠く場合が多く、病態や進行も多様であるため、早期診断に対する画像診断・解析技術は未だ十分確立していない。現時点でALSの有効な治療法は確立されていないが、近年の病態機序の解明に伴い、遺伝子治療や疾患修飾薬による早期治療介入が現実のものになりつつあり、簡便性・汎用性・定量性を有する高精度早期診断バイオマーカーの確立が急務である。そこで我々は、独自に開発した次世代MRI解析法である拡散尖度イメージング(diffusion kurtosis imaging, DKI)と定量的磁化率マッピング(quantitative susceptibility mapping, QSM)を用いて、筋萎縮性側索硬化症における脳微細変化を検討し、その障害を最も鋭敏に検出可能な指標を明らかにすることで、高精度早期診断技術の確立を目指している。これまでに岩手医科大学附属病院神経内科に通院・入院したALS患者26名と健常者ボランティア22名の撮像を実施した。独自に開発したソフトウェアを用いて、DKIより拡散指標マップ(mean kurtosis [MK], fractional anisotropy [FA], mean diffusivity [MD])とQSMより磁化率指標マップ(mean susceptibility, MS)を算出し、早期に器質的変化をきたす錐体路と運動野を対象に、現在Johns Hopkins大学の公開アトラスを用いて自動計測による定量解析を行っている。また、DKIとQSMの次世代解析法を運動失調症(PD/MSA-C/MSA-P/PSPS)の鑑別診断に応用し、脳幹や小脳脚の軽微な変化を検出することができ、高い感度と特異度(80%以上)で鑑別できることから早期診断の一つとして有望であると示唆された。
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