研究課題/領域番号 |
16K19523
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
荒野 拓 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (80750091)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / Parkin / PINK1 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
本研究では、パーキンソン病原因遺伝子の1つであるユビキチンリガーゼE3 Parkinについて、ドーパミン神経特異的なParkinのユビキチン化基質を同定し、パーキンソン病発症機序との関わりを明らかにすることを目的としている。パーキンソン病は中脳黒質のドーパミン神経脱落を特徴とする進行性の神経変性疾患であり、その原因遺伝子にはミトコンドリアの機能維持や構造に関わる遺伝子が報告されている。Parkinは、同じくパーキンソン病原因遺伝子産物PINK1と協調的に働き、膜電位の低下した不良ミトコンドリア上のタンパク質にユビキチン鎖を付加することでミトコンドリア選択的オートファジー(マイトファジー)を誘導している。ドーパミン神経特異的なParkin基質の代謝異常が、パーキンソン病で見られるドーパミン神経の変性に関与することが予想される。 本研究では、ビオチンを用いたin vivoユビキチン化タンパク質精製法を用い、ハエドーパミン神経特異的なParkin基質の探索を行う。具体的には、ビオチン化シグナル付加ユビキチンとビオチン化酵素を連結した人工タンパク質をハエドーパミン神経に発現させ、アビジン-ビオチン相互作用を利用した免疫沈降を行うことで、ユビキチン化タンパク質の高純度精製を行う。精製試料を質量分析にかけParkin基質の同定を行う。この時、Parkin由来以外のユビキチン化タンパク質が同時に精製されることが予想されるが、Parkinの過剰発現系統とコントロール遺伝子発現系統を用意し、質量分析結果を比較することで、Parkin由来のユビキチン化タンパク質を同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験当初より、細胞数の少ないドーパミン神経細胞のみを標的としたビオチン化ユビキチン精製では質量分析に用いるためのタンパク質量の確保が問題であった。この問題を解決するため、プロテアソーム分解阻害やParkin過剰発現によるユビキチン化タンパク質の増加を狙ったが、ビオチン化ユビキチンの精製量増加は見られなかった。 本研究で用いているビオチン化ユビキチン精製法は、内在性の脱ユビキチン化酵素を利用している。ハエの発生段階により脱ユビキチン化酵素の発現量や種類が異なることが報告されていることから、これまでハエ成虫を標的としてきたが、ハエ幼虫を用いてビオチン化ユビキチンの精製を行ったところ、成虫を用いたサンプルよりも個体数あたりの精製量の増加が見られた。今後、ハエ幼虫の個体数を増やした試料を用いて質量分析でのParkin基質の同定を行う。
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今後の研究の推進方策 |
ビオチン化ユビキチンの精製量の問題は徐々に解消されており、ハエ幼虫から得られたビオチン化ユビキチン精製試料を用いてドーパミン神経特異的Parkin基質を質量分析で同定を行う。この時、同定された基質がハエ成虫ドーパミン神経に発現しているか検討が必要である。同定された基質は、ハエ系統を購入し、Parkin変異との関係を調査していくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた質量分析による基質同定まで研究が進まなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は質量分析費用として使用する予定である。
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