研究課題/領域番号 |
16K19525
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
孟 紅蕊 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (90736498)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | パーキンソン病 / ミトコンドリア / CHCHD2 |
研究実績の概要 |
本年度は、CHCHD2の生体での役割を明らかにするため、CRISPR/Cas9を使ったゲノム編集により、CHCHD2遺伝子を欠失したショウジョウバエ(CHCHD2ノックアウトハエ)を作製しました。このハエを解析することにより、CHCHD2がなくなるとミトコンドリアの細胞内呼吸(酸素呼吸)が低下し、活性酸素種(ROS)が発生することが分かりました。電子顕微鏡観察から、ミトコンドリアのクリステは酸素呼吸に関わる酵素群が配置されている場所で、CHCHD2ノックアウトハエのクリステ構造が崩壊していることを明らかにしました。哺乳類培養細胞からCHCHD2と協働する、クリステの維持およびチトクロムCの安定化に関わるMICS1を同定しました。CHCHD2がなくなることにより、チトクロムCの不安定化、ROSの発生、細胞死シグナルの活性化が起こり、神経細胞死が誘導されることが分かりました。パーキンソン病家系で見つかったアミノ酸変異を導入したCHCHD2では、 CHCHD2ノックアウトハエのミトコンドリアの不調を改善させることができませんでした。このことから、パーキンソン病はCHCHD2の機能の喪失で発症することが考えられます。更に、この動物モデルを用いて、変異ミトコンドリア過剰ROS発生を抑える遺伝子として4E-BPを見出しました。 そこで、CHCHD2ノックアウトハエへ4E-BPを遺伝子導入したところ、ミトコンドリアの形態、機能改善及びドーパミン神経脱落の抑制を認めました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、交付申請書の計画した実験が遂行できた。本研究で開発したCHCHD2モデルハエを用いてパーキンソン病モデル関与する表現形を検討した、ミトコンドリアおよび神経の加齢依存的な変性を忠実に再現するパーキンソン病モデル動物で開発成功した。また、哺乳類培養細胞でCHCHD2と細胞死関与分子との協働するマケニズム検討を行いました、CHCHD2協働する、クリステの維持およびチトクロムCの安定化に関わるMICS1をを同定しました。これらの結果より、ミトコンドリアの機能不全による酸化ストレスと細胞死シグナルの活性化の分子レベルでの病態機序、およびそれを改善する遺伝子が明らかになりました。それらの結果を筆頭著者として論文発表に至った(Meng, Yamashita, et. al. Nature communication, 2017)。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
CHCHD2の生理的・病理的役割、CHCHD2と関係する分子のネットワークを明らかにするために、CHCHD2のノックアウトモデル及び細胞死関連分子或るいクリステ形態制御分子トランスジェニックハエと掛け合わせ、CHCHD2欠失表現型に与える遺伝学的相互影響を観察する。CHCHD2の機能喪失で代償的に発現上昇する、CHCHD2と複合体を形成することから結合パートナー変異のため不安定化する、あるいはリン酸化/ユビキチン化修飾されるなど、タンパク質レベルでの変化が検出されると考えられる。見出された成果は、CHCHD2患者脳(脳ライゼート、脳組織切片)で確認する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度収入と支収使用額をゼロに調整しなっかた。
|
次年度使用額の使用計画 |
消耗品購入、学会参加費など使う予定。
|