研究実績の概要 |
ヒト検体を用いた解析で、末梢血CCR9+CD4+T細胞のメモリーT細胞中頻度(%CCR9)を、健常人(HS, n=14)、高齢健常人(elder HS, n=6)、再発寛解型MS (RR-MS, n=20)や二次進行型MS(SPMS, n=29)、視神経脊髄炎(NMO, n=12)において調べた。HSでは頻度がメモリーT細胞中の5%程度であるのに対し、SPMSでHSと比較して減少していることが分かった。また、%CCR9は年齢が上昇するにつれて頻度が低下することが分かった (R2=0.74, P < 0.0001)。腸内細菌異常がよく知られるパーキンソン病(PD, n = 7)、PD以外の神経変性疾患(non-PD, n=5)を解析すると、PDでは%CCR9が上昇していたが、non-PDでは同年齢のelder HSと変化が無かった。CCR9+CD4+T細胞は、中枢神経ホーミングレセプターであるCCR6を高発現していた。RR-MS/NMO患者再発時の末梢血・髄液を解析すると、CCR9+T細胞は、髄液に浸潤するとLAG-3を高発現することが分かった。CCR9+CD4+T細胞は、C-MAFを高発現し、HSにおいては抑制性サイトカインIL-4やIL-10を高産生する制御性のフェノタイプと考えられたが、SPMSではCCR9+CD4+T細胞中のRORgtの発現や炎症性サイトカインIL-17Aの産生が高まっており、炎症性T細胞であるTH17の方向へフェノタイプが変化していることが分かった。フリューダイム社のC1 Biomarkシステムにてシングルセル解析を行い、詳細を検討中である。 以上の結果より、加齢と腸内細菌の変化によりCCR9+CD4+T細胞の頻度、機能が変化することがSPMSの病態に関わっている可能性がある。
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