新たなインクレチンとして、GIP (1-30)が注目されているが、これまで測定系は確立されておらず、分泌動態や生理学的意義は明らかではなかった。本研究では、GIP (1- 30)に高い特異性を有するELISA法での測定系を確立し、生理的なGIP (1-30)の分泌動態および糖尿病における分泌異常の有無を探求することを目的とし検討を行った。 既存のGIP (1-42)のN末端を認識する抗体に加え、新たにGIP (1-30)のC末端を特異的に認識する抗体を作成し、サンドイッチ法によるGIP (1-30)の特異的ELISA系を開発した。 交差性の検討において、GIP (1-30) amideの添加により用量依存性の吸光度上昇がみられたが、GIP (1-42)、GLP-1 (7-36) amide、glucagon、oxyntomodulinの添加による吸光度上昇はみられず、本ELISA系がGIP (1-30)に対し高い特異性を有することが明らかとなった。 正常耐糖能者における経口糖負荷試験および食事負荷試験において、ともに負荷後のGIP (1-30)の分泌増加が観察された。また2型糖尿病患者における食事負荷試験においても負荷後のGIP (1-30)の分泌増加が観察された。以上より経口での糖および糖・脂質・蛋白質混成食の摂取がGIP (1-30)の分泌促進因子であることが明らかとなった。また、末梢血中のGIP (1-30)濃度は、GIP (1-42)濃度に比し低値であることも明らかとなった。 さらに既知のインクレチンと同様、正常耐糖能者および2型糖尿病患者ともにDPP-4阻害薬によるGIP (1-30)濃度の増加が観察された。
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