研究課題
in silico化合物検索および表現型スクリーニングによって同定した化合物Xは膵β細胞においてグルコース濃度依存的なインスリン分泌増強効果を有している。本研究では化合物Xを利用したプロテオミクス手法により、新規インスリン分泌増強メカニズム解明を目的としている。平成28年度は主に化合物Xよりもより高活性化合物同定を目的に、構造活性相関情報の取得を目的とした。1.化合物Xの類似体および誘導体の取得。化合物データベースSciFinderを用いて、化合物Xと類似性を有する化合物を抽出し、約400万種類の化合物を扱うナミキ商事より購入した。しかし、市販化合物ソースからは数種類程度の化合物を得るに留まったことから、化学合成会社への委託により種々の官能基を付加した誘導体を合成した。以上より合計19種類の類似体および誘導体の取得に成功した。2.構造活性相関情報の取得膵β細胞株MIN6細胞を高濃度グルコース存在下にて、上記で得られた19種類の化合物(10microM)を処置し、インスリン分泌増強効果を数値化し、構造情報との関連を比較検討した。その結果、エチルエステル付加した化合物X-COOEtにおいて化合物Xよりも高い活性を有していることが明らかとなった。次に、マウス膵島でも同様にインスリン分泌実験を行い、化合物X-COOEtは化合物Xよりも高い活性を有していることを確認した。インスリン分泌は2相性であることが知られているため、次にマウス膵灌流実験により化合物X-COOEtがいずれに影響を与えるか検証したところ、化合物X-COOEtはインスリン分泌の第2相を有意に増強することが示された。化合物X-COOEtはケミカルプロテオミクスに必要である化学プローブ作成において有用であることが期待された。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は当初の計画通り研究が遂行可能であった。
平成28年度の研究により、ケミカルプロテオミクスに有用であることが期待される化合物X-COOEtの合成に成功した。今後も、当初の研究計画に従って研究を遂行する予定である。1.化合物X-COOEtのインスリン分泌特性の検証化合物Xは既知のインスリン分泌増強メカニズムへの関与が少ないことを既に示しているが、化合物X-COOEtのインスリン分泌増強効果も新規メカニズムを介しているか種々のアッセイ系により確認する。具体的には、マウス膵β細胞株MIN6に化合物X-COOEtを処置し、cAMP、カルシウムなどセカンドメッセンジャーの濃度変化を調べる。またインスリン分泌増強メカニズムに重要であるcAMP結合蛋白質(PKAおよびEpac2)の活性への影響を調べる。2.ケミカルプロテオミクスに用いるプローブの作成本研究ではケミカルプロテオミクスとして、①アフィニティークロマトグラフィー法、②光親和性タグを用いた方法、③Click Chemistry法を予定している。さらに4種類目の方法としてHaloタグを用いる方法を立案した。Haloタグは標的蛋白質と容易に共有結合することから、標的蛋白質同定に大きな利点がある。したがって今後化合物X-COOEtにHaloタグを付加したプローブも併せて作成予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
PloS one
巻: 11 ページ: e0164785
10.1371/journal.pone.0164785