研究課題
平成28年度および平成29年度の研究成果により、ケミカルプロテオミクスに応用可能である化合物X-COOEtの同定および表現型解析に成功した。平成30年度は化合物X-COOEtを用いて、以下の2点に関して研究を遂行した。1.Haloタグシステムによる、ケミカルプロテオミクスに用いる化学プローブの作成Haloタグは、低分子リガンドと特異的な共有結合を形成する33kDaのタンパク質であり、標的蛋白質の同定に有効なツールである。はじめに、化合物X-COOEtにalkane (CA)リンカーを付加し、さらにHalo-tagを付加することで化学プローブの合成に成功した。以上の合成および精製は神戸大学大学院工学研究科応用化学専攻 岡野健太郎博士との共同研究により行った。2.ケミカルプロテオミクスによる新規インスリン分泌増強関連蛋白質の同定表現型解析により、上記で作成したHalo-tagを付加した化合物X-COOEtは、膵β細胞株であるMIN6においてインスリン分泌増強作用を認めなかった。実際、MIN6細胞を用いて標的蛋白質の同定を試みたが、SDS-PAGEにおいて、遊離化合物により結合が低下する標的蛋白質と考えられる蛋白質のバンドは同定されなかった。そこで、研究計画に従い、化合物Xと類似構造を有するがインスリン分泌に対する阻害作用を有する化合物X-Iを用いる方針とした。その阻害作用は強く、化合物Xが約10 microMにて活性化作用を有する一方、化合物Yは1 microMでほぼ完全にインスリン分泌を阻害するため、化合物X-Iと標的蛋白質の親和性は化合物Xと比べて著しく高いことが予想される。したがって、今後は化合物X-Iを元にした化学プローブを作成し、同様のケミカルプロテオミクスを行う。
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Journal of Diabetes Investigation
巻: 10 ページ: 680-684
10.1111/jdi.12960
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
doi: 10.1111/jdi.13004