研究課題
本研究の目的は、欧米化した食事による腸内環境の変化を介したメタボリックシンドローム(MetS)発症のメカニズムを明らかにすることである。そのために、ヒトに関しては、日本人とロサンゼルス在住の日系米人、そしてマウスに関しては、通常食(NCD)あるいは欧米食のモデルとして高脂肪高蔗糖食(HFHSD)を与え、腸内細菌叢を含めた腸内環境を比較検討した。正常耐糖能の男性において、日系米人は日本人に比し、年齢が高く、総エネルギーに対する飽和脂肪酸の割合が高い傾向がある一方で、多価不飽和脂肪酸の割合は低かった。糖代謝に関しては、日系米人は日本人に比し、インスリン抵抗性の指標であるMatsuda Index(MI)が低値であった。腸内細菌に関しては、日系米人は日本人と比較して、門、属、種レベルにおいて、腸内細菌が異なることを認めた。その中でも、Bacteroidetes門に属する腸内細菌は、日本人と比し、日系米人でその割合が低く、日本人および日系米人において、MIと正相関を認めた。これらの結果は、生活習慣の欧米化により腸内細菌叢は変化し、その中でも、ある特定の腸内細菌が、インスリン抵抗性の増大に関与している可能性があることを示唆した。RNA-SeqでNCD群とHFHSD群の腸管の遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、免疫や各種トランスポート関連遺伝子の発現が変化していることを認めた。これらの変化は、ヒトにおいても、欧米化した食事による腸内環境の変化として認められる可能性がある。しかしながら、その中に、腸管特異的に発現し、ヒトにおいて血液で測定可能であるものを見出すことができなかった。
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Curr Med Chem.
巻: 25 ページ: 984-1001
10.2174/0929867324666171009121702.