研究課題/領域番号 |
16K19539
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
川村 良一 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (90533092)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インスリン抵抗性 / 遺伝子 / 環境因子 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
愛媛県東温市の地域一般住民2032名のDNA及び血清サンプルと臨床データは既に収集した。引き続き、毎年健診を行っており、健診参加者・サンプルは約2400人まで増えている。本集団において横断研究を行い、血中レジスチンを規定するレジスチン遺伝子の一塩基多型(SNP)、及び日常生活における環境因子を詳細に解析した。遺伝因子については、申請者らは、日本人448人の全ゲノム関連解析において、血中レジスチンはレジスチン遺伝子プロモーター領域のSNP-420とSNP-358によって最も強く規定されることを報告した。本集団においても、血中レジスチンはSNP-420とSNP-358によって最も強く規定されることを確認した。環境因子については、一般の健診項目の他、食品摂取頻度調査(FFQ)による栄養摂取量、加速度計測機能付き生活習慣記録器による1週間の運動量、自宅での睡眠状況、家庭血圧、自律神経機能、認知機能、サルコペニアの評価等、日常における詳細な環境因子を定量化している。横断研究の結果、これらいくつかの環境因子が血中レジスチンと関連した。その一つとして、白血球数・高感度CRPの高い肥満とレジスチンSNP-420は、相互作用により血中レジスチンを高めることを報告した。 同時に、本集団は5年後の追跡調査を継続中である。75gブドウ糖負荷試験を含む詳細な健診を再度行い、これにより、5年間でのインスリン抵抗性や分泌能の悪化、糖代謝異常の発症が解析可能となる。さらに、動脈硬化の悪化や心血管病の発症が評価できるようになる。現在までに約1400人の5年後の追跡データが利用可能となった。これにより、横断研究で同定したSNP・環境因子相互作用を前向きに解析可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般住民2032名において横断研究を行い、SNP-420、SNP-358が最も強く血中レジスチンを規定することを確認した。これらの遺伝子と相互作用を有する環境因子を解析し、白血球数・高感度CRPの高い肥満とレジスチンSNP-420は、相互作用により血中レジスチンを高めることを報告した。 健診参加者・サンプル数は約2400まで増え、5年後の前向きの健診も計画通り進んでいる。本年度までに約1400名の前向きの健診が終了した。 以上より、一般住民における遺伝子・環境因子相互作用の解析はおおむね予定通り進んでいると考える。 in vitro解析では、ヒト単球培養細胞THP-1において、添加可能な栄養素等を使用し、レジスチンのmRNAに及ぼす影響を検討している。刺激時間や濃度などの条件設定を検討しており、今後さらに実験を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度も、引き続き健診、追跡調査を予定している。これにより、2032名の5年後の追跡の健診が終了し、前向き研究が可能性になる。横断研究で同定したSNP・環境因子相互作用と、5年間における2型糖尿病の新規発症や糖代謝異常の悪化、メタボリック症候群、動脈硬化指標の変化、心血管病や認知症、サルコペニア発症との因果関係を解析する予定である。 さらに、環境因子と関連し、SNP特異的に結合する転写因子・共役因子をin vitroにおいて解析する。 こうして、血中レジスチンを制御する遺伝子・環境因子相互作用を同定することで、インスリン抵抗性疾患の統合的な個別化予防・治療法の確立が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
当研究室で使用可能であった各種測定キット、消耗品類を利用したため、当該助成金が生じた。当該助成金は、次年度の健診サンプルが集まった段階で、血中レジスチンなどのサイトカイン測定や環境因子の定量化、SNPタイピング、in vitro解析試薬等に使用する予定である。
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