研究課題/領域番号 |
16K19545
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
吉田 昌史 自治医科大学, 医学部, 講師 (50528411)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インスリン分泌 / インクレチン / GPR40受容体作動薬 / アドレナリン / Trpチャネル |
研究実績の概要 |
TrpC3経路:単一膵β細胞をGPR40作動薬(Fasiglifam;Fas)で潅流すると有意な内向き電流の増加が見られた。この作用はTrpチャネル阻害薬(2-APB)及びTrpCチャネル阻害薬(BTP2)により打ち消された。Fasの電気生理学的作用はPLC阻害薬(U73122)及び、小胞体イノシトール3リン酸受容体阻害薬(XestosponginC)で打ち消された。Fasのインスリン分泌促進効果は2-APB及びBTP2で拮抗された。またPLC阻害薬、小胞体イノシトール3リン酸受容体阻害薬によっても打ち消された。GPR40受容体作動薬は、PLC-TrpC経路を介して内向き電流であるTrpCチャネルを開口させ、インスリン分泌を増強することを見出した。 アドレナリン(Adr)のTrpM2経路に対する作用:WTマウスで、低濃度Adr(1nM)は高濃度Adr(5µM)と同様にブドウ糖(G)刺激(16.6 G)およびインクレチン刺激(5.6 G下Exendin-4(Ex4))による背景電流増加およびインスリン分泌刺激作用を抑制した。TRPM2KOマウスにおいて、高濃度Adrはインスリン分泌を抑制したが、生理的濃度Adrは抑制しなかった。AdrによるcAMP産生の抑制はTRPM2KOマウスでも見られたことから。α1,α2C,β受容体拮抗薬投与下では低濃度AdrはEx-4刺激背景電流増加を抑制したが、ヨヒンビンおよびα2A受容体拮抗薬投与下では低濃度AdrはEx-4刺激背景電流増加を抑制しなかった。これらから、低濃度Adrによるインスリン分泌抑制作用は、α2A受容体-cAMP産生抑制を介した背景電流抑制作用によることが明らかとなった。生理的低濃度のAdrは、cAMP/TRPM2チャネル経路を介してブドウ糖およびインクレチン刺激インスリン分泌を抑制する事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度はTrpC3チャネル経路のシグナル解析を中心に実施する予定であったが計画よりも順調に解析が終了し、平成29年度に予定していたインクレチン作用に対するアドレナリンの効果の検討を前倒しで検討することができた。しかしながら、当初予定していたグルカゴンのTrpM2経路に対する作用については未実施であり、今後の研究進行状況を判断し、組み込む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、次のⅰ)、ⅱ)を中心に研究を継続する。 ⅰ)cAMP-EPAC2-Trpm2経路、TrpC3経路の新たな制御物質・調節因子・シグナルの解明 ⅱ)インスリン分泌促進物質、抑制物質のTrpに対する相互作用を検討する グルカゴン、オキシトシンの作用について検討予定である。 ⅰ)ⅱ)の進行度を考慮しつつ、可能であれば糖尿病モデル動物を用いた検討を介しする。糖尿病モデル動物は多数おり、その選定には時間がかかる事が予想される。 それと同時に、前年度得られた成果の臨床応用への応用が可能かどうかの検討を始める。具体的には、前年度の成果より生理的濃度のアドレナリンがインクレチン効果を減弱させる可能性が示唆された訳であるが、実際にストレス下(肥満、夜間歯ぎしり、低血糖、睡眠時無呼吸)の患者において証明が可能かどうか、研究計画を練る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度より研究室の人員増大に伴い、細胞培養用のインキュベータを共同で利用することとなったが、その結果細胞ダメージが増大し、実験に支障が生じるようになった。そのため、我々専用の新たな細胞培養インキュベータを購入する予定とし、費用を確保していたが、設置場所の選定に時間を要し、次年度への繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に細胞培養用のインキュベータを購入する。
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